(340) モンゴル日記(66)

【バヤン・チャンドマン農場①】

 夜明け前だった。空には満月を過ぎたばかりの月が浮かび、地上には厠が立っていた。早朝 5時過ぎの、静寂に満ちた風景である。まだ誰も起きてこない。

 ここはバヤン・チャンドマン農場。ウランバートルから車で約1時間半。以前にも紹介したが、50haもある大農場である。今回はソヨーチ社のD社長,親友Bさんらと前日の夕方にやって来て、ここのログハウスに泊まった。子供を含む先発組がすでに来ていて、総勢は7人だった。前夜は、その中で筆者がいちばん早くベッドに入ったようだった。モンゴル・ウオッカを浴びたからだろう。

 そのせいもあり、早く目が覚めた。幸い 二日酔いはなく、頭はスッキリ。7月下旬なので、外は寒くない。夜明け前のこうした雰囲気はいいものだ。何か神秘的でもあり、昼間より五感が敏感になっている。そんなうす暗いなかだが、「屋外活動」を始めた。

 まずは、ログハウスから懐中電灯とトイレットペーパーを持ち出し、厠に向かった。掘っ立て小屋式の、昔 田舎にあったようなあれである。そこで用を足すのは、この国で何度か体験している。が、中に入りしゃがみ込むと、やはり不思議な空気が漂ってきた。そうして、「おれは今、どうしてケツを出してここにいるんだろう・・・」、そんなことをフッと思った。

月明かりのもと 草原の厠に入ると、哲学的な思いが湧いてくる。日々快便、日々好日。 (K.M)