(355) 月と電線

月と電線

月と電線

 写真上は、雲と電線もうっすらと写ってはいるが、一応まともに月が撮れている。それに対して、写真下はその数分後なのだが、電線がまるで月をツキ通しているような画像になった。

 これはちょっとシュールで、気に入った。意図したものではなく、何かのはずみで偶然でき上がったもので、撮ったのではなく「撮れた」と言うべきなのだろう。

 これは満月直後の月で、日にちは11月19日のこと。その頃、月齢にかかわらず良い月をたびたび拝めた。この夜もそうで、寒々とした空気の中でときどき雲がかかったが、冴えていた。写真下は偶然のお遊びとしても、風情のある月だった。

 俳句ではふつう、月と言えば秋の季語とされるようである。やはり、それほど秋になると月の風景が人の心を引きつけるようだ。気候的な条件もあるし、たぶん人間の心理的な面も関係してくるのだろう。動的で激しい夏が過ぎ、静的ではあるが厳しい冬を迎える時季でもある。もの悲しい気持ちになりやすいのかも知れない。そのうえ、月が発する独特の吸引力のせいもあろう。秋には、そのパワーが一段と強まるのだろうか。

 月光の つきぬけてくる 樹の匂い  (桂 信子)

 とにかく 、この夜の月は青白い色気のようなものすら感じた。この号が公開されるのは、ちょうど筆者がモンゴル滞在を終える頃だ。

冬に入ったかの地では、どんな月が見れるだろうか。 日々好月、日々感謝。 (K.M)