(694) モンゴル日記(409)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて157 】

 朝食後に皆が帰り支度に取りかかった。しかし全員が一斉にスタートしたわけではない。実は2グループに分かれたのだ。何も内輪もめをした訳ではなく、事前にそう決めていたらしい。ランドクルーザーのBa氏一家とXトレイルのB氏と筆者が先発グループ、そしてT氏とJ氏の家族2組が後発グループとなった。

 それで筆者たちは後発グループに見送られて、テント設営地を後にした。結局,スタート時刻は12時。そして来るときと同様、Ba氏のクルマが前を走った。この時点で、ここから先に何が起こるのか、そんな事などB氏も筆者も全く想像していなかった。

 上の写真のように、通り過ぎる丘陵にあのカモメらしき鳥たちがいたことに喚声をあげ、川を渡り丘を越えた。まァ順調に帰り道を進んでいるように思えた。

 けれど,それも30分ほど。実は上の写真と下の写真の間に、大トラブルが起きた!!乗っていたXトレイルがエンジントラブルを起こしてしまったのだ。

 長い上り坂を越えて平場に変わったときのこと。走っていたら、突然ボンネットのすき間というすき間からボワッと水蒸気が噴き出したのだ!いやァたまげた!即座にB氏は停車した。と,エンジンの温度が上昇してきたのである!原因はラジエータだった。そのリザーブタンクのホースの留め具が外れ、その瞬間に圧力のかかっていた水蒸気・熱湯が一気に噴出したらしい。いやァ、こんな目に遭うのは初めて!それも何もモンゴルの大いなかで起こさなくても・・・。

 B氏は”噴出”がおさまってから、ボンネットを開けた。彼はエンジンについて詳しいのか、すぐに原因を突きとめた。そして「漏れてもいいから、まずラジエータにどんどん水を入れましょう。あっちこっちにミネラルウォーターを積んでいるから、それを使いましょう。シャチョーすぐ探してください。入れるのは私がしますから」。

 彼はどこからか厚い手袋を探し出して手にはめ、慎重にラジエータの蓋を開ける。筆者は指示どおり動いて、すぐにミネラルウォーターを見つけ出し、2㍑ボトルを4,5本渡す。

 しかし,しばらくは水を注いでも注いでも足りないようだった。が、しだい水蒸気は出なくなってきた。それから彼はバッグからタオルを取り出し、またペンチのような用具をクルマから探し出した。そしてリザーブタンクの外れた留め具を、手こずりながらも取り付け直しにかかった。何とかうまくいった。それから次の指示である。

 「シャチョーは前を走っているBa氏のクルマを追っかけてくれませんか。あまり私たちが遅いので、きっと待っていることでしょう。私はもっと水を入れます。」その指示通りに、筆者はB氏とXトレイルが気になりながらも、速足で歩きだした。けれど30分も歩いたろうか。Ba氏のクルマは全然見えてこない。それで決断して、引き返すことに。

 戻ったら、B氏は足もとにきれいな水の入ったボトルを数本置いていた。どうやら,あっちこっちにミネラルウォーターが積み込んであったようだ。とにかくまずは安心。水温もまともになって来たようだ。やがてBa氏たちも戻ってきてくれた。いやァ助かった!

 下の写真は応急措置をほどこしたXトレイルが、再び動き出したところだ。この後、3ヶ所で水の補給を行いながら帰り道を進んだ。

 日本ではあり得ないことを経験した。時々タマゲ、たまーにブッタマゲ。 (K.M)