(691) モンゴル日記(406)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて154 】

 写真は上・下ともオキナグサである。花が完全に終わっていて、種子が付いた白い綿毛の状態になっていた。和名はこの綿毛を老人(翁)の頭髪に見立てて付いたらしい。

 さて,その数多くの白い綿毛はちょうど昇ってきた朝日を受けて、角度によっては銀色に輝いてきた!それが何とも魅力的で、思わず「おおっ!」。ワレモコウとはだいぶ違う雰囲気だった。

 また,これらオキナグサはワレモコウより生えている密度が濃かった。それゆえ一応,群落と言ってよいのかも知れない。だからこそ,開花状態なら素晴らしい風景だろうなァと想像した。

 ところで,モンゴルでこの花に最初にお目にかかったのは2015年6月のこと。それは今回の滞在地フブスグル県のお隣=ボルガン県のエグ川においてだった。その岸辺の石の間から、濃い青紫の花が一輪だけ伸び出ていた。「ほほう,これが聞いていたモンゴルのオキナグサだろうか」。それは六弁でとても魅惑的な花だった。

 モンゴルにはこのオキナグサの仲間は数種類あるようだ。花色で示すと、筆者が出会った青紫,それに紫,クリーム色である。それらはみな有毒植物らしいが、モンゴルでは伝統的な薬用植物としても利用されてきたようだ。それも根や茎ではなく、花の部分を使うらしい。

 さて,この写真のオキナグサは何色なのだろうか?満開の時期に必ず訪ねよう。

 日々希望、日々願望。 (K.M)

(690) モンゴル日記(405)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて153 】

 写真の上・下はいずれもワレモコウである。密集度合いはそれほどでもないが、草丈があって花もこげ茶というか暗赤色というか、目立つのだ。だから,一応お花畑のような景観となる。

 このワレモコウ、この国ではこれまでいたる所で目にしてきた。親友B氏のダーチャでも見たことがある。ただ,こうしてまとまった集団にはあまり出会ったことはなかった。

 下の写真は上の写真のほんの数分後の風景だ。ちょうど昇ってきた朝日が、ワレモコウの花に徐々に射してきたところ。これが何とも言いがたい風景に変わった。しだいに陽光が当たってくると、その花がキラキラとまるで反射するように、独特の輝きを帯びてくるのだ。それはそれは見事!その光景にいっとき見入っていた。そうしたら,たまに覚えるあの感覚、「オレは今どこにいるんだろう」という意識が襲ってきた。

 まもなくその感覚がおさまり、現実に戻る。そして日本では、野生のワレモコウというのは見たことがないことに気づいた。植物図鑑などには北海道から九州まで、山野ならどこにでもあるように書かれてある。しかし筆者は、まとまった数のこの花には出会ったことがないと思う。

 ところで,この植物は分類上はバラ科ワレモコウ属だという。で,この仲間には山野草のカライトソウなども含まれるという。恥ずかしながら知らなかった。

 日々勉学、日々弁萼。 (K.M)

(689) モンゴル日記(404)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて152 】

 上の写真は背景にワレモコウの集団が見えるが、それについては後の号で述べる。その手前のネギの仲間に注目してもらいたい。この写真をよーく覗き込むと、ワレモコウに混じってこの赤花のネギが中ほどまで生えているのが分かる。

 これらネギ類(アリウム属)はあちこちで出会った。行きの途中の峠で、食用にネギを採取した女性にも会った。また最近NHKテレビで、ネギの仲間のある種類がこのモンゴルを原産地としているらしいということも放送された。

 と,草原を歩きまわっていたら、写真下の白いネギ(と思われる)を発見した。これは所々にしかなく,数は多くはなかった。しかし,この草原で赤と白のネギに出会い、ちょっと嬉しかった。

 ところで植物の花や姿を鑑賞するのが、花き園芸の本質なのだろう。けれど、たまたまヒトが食用とするその植物の花や姿形が美しい、逆にヒトがその花に興味を引かれた植物が食用にできるという、こうしたケースは少なくはないのだろう。

 個人的な好みながら、身近なところで見まわしてみる。夏であればナス,オクラ,トマト,ジャガイモあるいはザクロなど、花色や姿形に魅かれる花は少なくない。けれど中には、花はイマイチというものもある。同じネギでも日本でふつうに食しているネギ類は地味な方だし、トウモロコシの花もそうかも知れない。

 日々鑑賞、ときどき食用。 (K.M)

(688) モンゴル日記(403)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて151 】

 写真上はマメ科植物と思われるピンクの花を主体に、様々な植物が混在するようすだ。たまたま白い花が何種か混じった。先に紹介したエーデルワイスとか、ネギ類とか。面積的にそれほど広くはなかったが、ミニお花畑だった。

 下の写真はそのマメ科植物の花の拡大だ。マメ科だろうという見当は、筆者でも容易についた。この花の格好や葉などからだ。でも,これをより詳しく調べてみる。モンゴル側の資料と日本の野草事典等にもあたった。そして,おおよそ見当がついた。

 それはマメ科オヤマノエンドウ属(Oxytropis)の植物ではないか、ということだ。日本でも数種は分布するようだ。モンゴルではキク科も多いが、マメ科も少なくない。

 ところで筆者は時間を忘れて写真を撮ったり、草原や山裾を歩きまわっていた。が,忘れ物に気づく。それと今朝2回目の”草むら用務”がしたくなった。はっきり書くと・・・用便だ。

 それでテントに戻る。そして,忘れた4色ボールペンを探し出す。さらにポケットティシュ―も多めに持った。パートナーB氏はまだぐっすりお休みのようだ。もちろん他の方々もそのようだった。

 その後テントを出て、川べり上流の方に向かう。そして丈の低いヤナギ群のすき間を見つけ、腰を下ろして”用務”を済ました。夜露がまだ残っており、尻のあちこちがヒヤッとした。

 日々快食、日々快便。 (K.M)

(687) モンゴル日記(402)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて150 】

 上の写真だが、これも明らかにキク科植物である。ノコンギクかヨメナの仲間だろうか。この草原では多くはなかったが、所々に見られた。ただこの写真の花はもう終わり近づいていたようだ。

 そして下の写真。たびたび登場しているモンゴルのエーデルワイスだ。りっぱな株が2つ寄り添っていた。どちらも10輪近くは花を付けていた。これらが上の紫のノコンギク(ヨメナ?)の近くで咲いていたのだ。渋い組み合わせだが、このうす紫と白という花色のコントラストも悪くはない。

 ところで,思えばエーデルワイスも分類上はキク科である。大雑把に言えば、ノコンギクやヨメナと同じグループなのだ。和名でいうと、キク科ウスユキソウ属(Leontopodium属)である。なお日本にはこの仲間が7種ほど分布するようだ。

 ただ日本では”アルプスのエーデルワイス”は、セイヨウ ウスユキソウと呼ばれ、その学名はLeontopodium alpinumとされている。

 それに対して、たびたび登場するこのモンゴルのエーデルワイスに関して、モンゴル側の文献を調べていった。さらに参考までに日本語で書かれたモンゴルの牧畜に関する論文にも目を通した。そうして出てきたのが、Leontopodium campestreだった。モンゴル・ウスユキソウとでも呼べばよいのだろうか。

 日々キク科、日々聞くか。 (K.M)

 

(686) モンゴル日記(401)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて149 】

 上の写真はこの草原で唯一撮影したイネ科(だと思う)植物である。個体数はひじょうに少なく、ここでは珍しかった。それもあってレンズを向けた。草丈は70,80㎝はあったろうか。生育していたのは草地ではなく礫混じりの場所だった。

 この植物は面白いことに、穂先部分の多くがほぼ直角に横に折れていた。これも目に留まった理由のひとつだ。人為的にそこが折られたわけではなかろう。もともとこうした形質なのだろうか。ところでイネ科植物は美しさや色香とは無縁のように感じる。しかし人類は基幹食料として米や小麦に全面的に頼っている。地球上のほとんどの人々が毎日どちらかに世話になっている。偉大な植物グループだと思う。

 さて下の写真はエーデルワイスの集団である。手前には少しだけキク科植物が見られるが、大半がモンゴルのエーデルワイスである。見渡す限りとはいえないが、面積は数百㎡はあったのではなかろうか。とにかく,なかなか広がっていたのだ。ただ花色が派手ではないので、強烈さを与えない。しかし暖かい心持ちにはしてくれる。

 興味深かったのはここのエーデルワイスはみな背丈があり、多くが30㎝以上はあるようだった。こんなに多くの背高ワイスがある風景は、これまで見た記憶がない。そこで浮かんだ。この花のモンゴルでの花言葉は「草原の貴婦人」!

 日々興味津々、日々ワクワク。 (K.M)

(685) モンゴル日記(400)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて148 】

 上の写真の植物は前号に引き続いて、キク科植物だと思う。しかし,同一種ではないという気がするが、分からない。草丈は数十cm、花茎はまっすぐで葉がほとんど付いていない。トゲがないから、やはりタムラソウに近い種だろうか。

 また写真下のこの黄色い花は何だかよく分からない。何の仲間か,分類の科名も見当がつかない点では、今回の旅で撮影した植物のなかでは一,二番だ。ただ,ご覧のとおり特徴的な姿である。葉の付き方が輪生であること。また四弁花らしいが、その集合が花穂を形成していること等である。

 どうして,この二つの花を撮影したか。このピンクと黄色のコントラストが興味をそそったからでもある。たまたま,この二つの植物はお互い近い位置にあったのだ。

 ところで,この草原の南端には唯一の道路が走っていた。もちろん舗装ではない。その道路を走るクルマなど、きのうの到着時から一度も目にしていなかった。ところが,筆者がこうして植物の撮影に没頭していたら、1台のトラックが近づいて来た。ここで初めて出会った車両だ。

 運転手は男性で年配のようだった。彼は筆者の方を見ながら、ゆっくりと過ぎて行く。草原で何をしてんのか,イイ年のおっさんが、と思ったかも知れない。積み荷などはなく、何かの調達だろうか。でも,どこからやって来たのだろう?

 日々植物、日々動物、たまーに”ヒト”。 (K.M)

(684) モンゴル日記(399)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて147 】

 写真上はキク科植物と思われる。ただキク科は幅ひろく多くの種類があるから、筆者は正直よく分からない。どちらかというと、タムラソウに近い種だろうか。大株が目立ったが,集団は形成せず、草原の端あるいは河川敷あたりで生育していた。

 下の写真は、写真上とは違うキク科植物とモンゴルのエーデルワイスが混在する様子だ。草丈はどちらも高くない。広い面積ではないが、ミニお花畑といったところだろうか。

 ところで以前にも触れたが、この草原の南側には低い山が東西に延びていた。比高でいうと、この草原より100mほど高いくらいか?その山麓には樹林帯があり、そこに様々な野鳥が棲んでいた。とにかく早朝から、色んな鳥の鳴き声,さえずりがそっちから聞こえてきた。また,ときどき河川敷の方からも届いた。しかし筆者の近眼もあるせいか、姿はまったく見えない。しばらく耳を澄ましていたが、それらは3,4種どころではない。7,8種類くらいだったように思う。時にカッコウみたいな声も耳にした。

 今回,長居したレンチンルフンブ村ではこんなに多くの鳥の声には接しなかった。こうした賑やかな朝のさえずりに接したのは、一昨年に行ったエグ川以来だった。そこは今回のフブスグル県の西隣ボルガン県なのだが。

 ところで,テントの中の人々はまだ誰も起きて来ない。モンゴルの人たちは宵っ張りの朝寝坊?! (K.M)

(683) モンゴル日記(398)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて146 】

 以前述べた植物だが、たまたまこの草原でも咲いていた。個性派なので再び紹介しよう。

 まず上の写真の植物。(写真がボケていて失礼!)花はデルフィニウムだろう。実はこれには既に、行くときに出会っていた。調べてみると、(562)号ではこれについて写真も載せて書いていたのだ。印象が強かったので覚えていた。

 青系でなく、このようにこげ茶色のような花色。けれど今回,写真右下のつぼみをよく見たら、少し青みを帯びている。だから蕾のうちは青っぽいが、花が開くに従い,こんなくすんだチョコレート色に変化していくのだろう。前回は行きだったので時間がなく、クルマから降りて撮影しただけ。でも記憶をたどっていくと、今回下ってきた川をはさんだ反対側あたりでそれを発見していた。だから,分布域がこの辺りなのだろう。

 さて下の写真である。これも以前に紹介した花だ。キンポウゲ科のトリカブト属(Aconitum属)の植物である。白と表現するよりはクリーム色と言うべき花色だが、れっきとしたトリカブトの仲間。ただモンゴルでは伝統的な薬用植物として利用されてきたようだ。背丈があって優しい草姿と花色なので、ここの草原でもやはり目についた。

 ところで朝のうち、辺り一帯には夜露が残っていた。これは多くの植物たちには命の露なのかも知れない。

 日々静かな感動、日々やわらかな充実感。 (K.M)

(682) モンゴル日記(397)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて145 】

 上の写真は日本のギシギシの仲間だろうか?姿・形が似ている。花穂?が赤かったので興味を引かれた。この草原では所々に立ち上がっていて、草丈は1mに達するものもあったろうか。

 しかし現地では気づかなかったが、この写真を拡大してみると、茎の中ほど右端に少し白っぽい花穂のような部分を発見した。たぶんこれが本当の花なのだろう。それが時間がたって、赤く変化したと思われる。

 さて下の写真は、テント設営地の朝を遠望したものだ。南側の山麓から撮ったもので、草原と川辺の間に豆粒のようなものが並んで見える。それが筆者たちのクルマとテントである。6時頃の写真だ。

 夕べは皆が遅くまでやっていたようだ。延々と飲み続ける男性軍、切れ目なく喋りつづける女性軍・・・それに絶えない笑い声。それでも筆者はいちばん早く眠ったようだ。

 この日の朝は5時に起床、うす曇り。山麓を中心に、周辺からは何種類もの鳥の声がにぎやかに聞こえてきた。もちろん誰も起きていない。いつものように”朝の用務”を草むらで終え、川で顔を洗う。清冽な水が気持ちよかった。そして,この日は朝の体操もやることができた。この日は奇数日だったので、「みんなの体操」と「ラジオ体操第一」。北モンゴルに来てからやれなかった日もあったが、今朝は爽やかな空気の中で「1,2,3,4・・・」と始めた。

 日々元気、日々爽快。 (K.M)