ニュージーランド出張報告

お客様各位

 

大変遅くなってしまいしたが、先月の上旬にニュージーランドへ視察に行ってまいりましたので、ご報告いたします。

 

今一度の確認ですが、日本向けのユリ球根生産会社は、北からアイランドバルブス社、バッカー社、バンザンテンNZ支社、サウザンフローラ社の4社で、チューリップ球根の生産会社はハークマンNZ支社の1社だけとなっております。下図で位置関係をご確認いただけたらと思います。

今シーズンのニュージーランドは、百合球根生産の視点で見ると、概ね天気は良好に推移しているようです。
それでは、会社ごとに状況をご報告させていただきます。なお、今回は時間の都合でバッカー社(バンザンテンのお隣さん)には訪問することができませんでした。


‐ バンザンテンNZ支社 ‐

面積:自社管理分 ±35ha
    近隣生産者への委託分 ±65ha
    計 ±100ha(内、販売用サイズ仕上がり分は65~70ha)

バンザンテンNZが位置するラカイアでは9月前半にまとまった雨があり、植付けの開始こそ少し遅れたものの、ほどなく天候に恵まれ、実際には例年よりも少し早く定植を完了したようです。その後も天候に恵まれ、初期生育は非常に良く、上根の形成も旺盛に行われました(これは、ニュージーランドの他の生産地であるネイピア及びゴアについても同様だったようです)。
12月と1月には非常に強い風が吹き荒れた日があり、それによって上部に葉に少し傷が見られましたが、問題にするほどでもありませんでした。
2月は、現地の人に言わせると「2月らしい2月」とのことで、暖かい日和が続いたようです。
3月も、視察時までの天気は「3月上旬らしい天気」とのことで、朝晩の気温は一ケタ後半、日中は10℃台後半~20℃といった、秋の訪れを感じさせる天気でした。

球根の生育状況については、1年栽培、1.5年栽培及び2年栽培球のいずれも順調に生育しています。例えば1年栽培球で、かなり大雑把な言い方になってしまいますが、植付けサイズが10/12cmであれば、16/18cm前後にまで大体の品種が肥大していました(もちろん品種によって差はあります)。試し掘りの最中、掘り上げた球根のサイズを見るたびにニュージーランド人とオランダ人はみんなで「Almost there」=「あ~、もう少しだねえ(あと1サイズで目標サイズに到達するので、掘り取りまでに十分とどくだろうな)」としきりに言っていました。ただ、2年栽培球に関しては、視察時の段階では、品種によっては僅かながら肥大しすぎの感もありました。うまく帳尻を合わせてくれるようお願いしておきました。
球根の見てくれや質感は、ほとんどのものがずっしりとした身の詰まったものでした。

‐ サウサンフローラ社 ‐

デヨングとの契約栽培を行っている会社で、南島の最南部に位置する都市インバーカーギルより、車で1時間ほど北東に向かったとゴアという町に位置しています。圃場はそこからさらに40kmほど離れた場所にあります。今回の視察期間中は、ニュージーランド全土で大体晴れていたので、各地域で気候の違いを肌で感じやすかったですが、やはりこの地域はラカイアよりも2~3℃くらいは低いかなという感じです。位置的にも当然と言えば当然なのですが‥日本で言うと東北地方北部といった感じでしょうか。

面積:デヨング契約栽培分 ±28ha
    オランダ切花生産者との契約栽培分 ±10ha
    自社切花生産用が少し
    計 ±40ha

ラカイアと同様、定植後の天気は良好で、初期生育も良く、ここまで順調に来ている様子でした。ただ、ラカイアと比べると、これまた大雑把に言って、例えば1年栽培球で0.5~1cm程度小さいのかなという印象でした。生産地の条件上仕方のないことではあるのですが。
今シーズンはLAにもまだボト枯れが始まっておらず、2年前の記憶と比べると、ちゃんとコントロールできているのかなと感じました。

て、ポールさん(サウザンフローラ社の社長さん)の圃場にも新顔の品種が幾つかありました。オリエンタルはモンテズマやサンタンダー、LAではエスプリ(2011年産より出荷)やラクスミなどが入っていました。オリエンタルはどのようなものを今後導入していくか定かではありませんでしたが、LAはデヨングの品種の品ぞろえがこれからも増えていくと思います。デヨングのLAはご存じの通り、速さのあるものが多いので、南半球産としては魅力のある品種が多いのかなと個人的には考えています。

‐ ハークマンNZ支社 ‐

ハークマンNZがあるエデンダールは、先述したインバーカーギルとゴアのちょうど中間あたりに位置します。平均的な気候もほぼ同様です。
ニュージーランドでのチューリップ球根栽培は、この時期には掘り取り、調整及び選別は大体が終わり、時期を見て再び目視検査、パッキングという段階です。

面積:±28ha(来年は大体34haの予定)

さて、作況ですが、先ほど平均的な気候はほぼ同様と言いましたが、こちらは遅霜や降雪等々で作況があまり良くなく、幾つかの品種で欠品があり、特にバレリーナやクリスマスドリームの12/+は大欠品となりました。そのためか、今年は10.5/11cmという規格でも選別を行い、出荷するようです。
掘りあがって貯蔵されている球根の見てくれは良く、重く、皮切れも少なかったです。ただ、数品種の小球で(10.5/11cm)ちょっとだけ扁平球まじりのものも見受けられました。パッキング前の最後の目視検査の時に、扁平すぎるものはなるべくハネてもらうようにお願いしておきました。

花芽分化の確認は、50球のサンプルをオランダ側に送り、向こうで確認してもらうという方法を相変わらずとっているようです。
幾つかの品種を測定してみましたので(時間がなかったので、ほんの5品種ですが)、以下に記します。

イルデとミストレスは、裸眼でもステージGを確認できる状態になっていました。なお、肝心のドリームは、木箱がかなり奥の方に置いてあったので確認できませんでした。

→球根の出来は今年も概ね良いようです

→早生品種ではステージGに到達

ハークマンNZの商売相手としては(オランダに対しても同じなのですが)、やはり日本の割合というのは大きくありません。2年前のレポートでも書きましたが、「ドリームを無くしたい。代わりにミストレスを使って」というのは分かりやすい例だと思います。ただ、来年もしくは再来年からはピンクツイストやジョーダンといったピンクの品種を導入していくようです(どちらもドリームの色合いとは異なりますが‥)。
これからも、アメリカや、オランダを含むヨーロッパなどの需要に見合う品種が導入、栽培されていくと思うので、その中で品種選択(といっても20品種強しかないですが)をして上手くやっていくしかなさそうです。

‐ アイランドバルブス社 ‐

ニュージーランドで唯一、北島での生産を行っている会社です。圃場と作業場はネイピアという都市の近郊にあり、ホークス・ベイ(Hawke’s Bay)と呼ばれる湾に面しており、日照量が多く非常に温暖な地域です。視察した当日もやはりかなり暖かく、日中は半袖で圃場回りをしました。日本で言ったら、鹿児島や宮崎といったところでしょうか。

面積:±35ha(販売用サイズ仕上がり分は±28ha)

こちらもラカイアと同様に初期生育は良好で、現在のところかなり順調にきているようです。1月に、40℃から翌日には一気に15℃になったということがあったようですが、ほとんど影響はないようです(このホークス・ベイ湾岸の地域は、冷たい南からの風に影響を受けるようです)。
試し掘りをした球根は、ずっしりと堅くしまったものがほとんどでした。バンザンテンNZ同様、2年栽培でちょっとだけ肥大しすぎのもあるかなという印象ではありました。

さて、この産地にはフレッターの品種がかなり導入されているようです。2011年産販売球としては、新しめの品種でカナレット、フェニス、ブルレスカ、コンパニオンなどがあります。種球養成用の圃場にもエマニーなんかが植わっていました。また、1年及び2年栽培ともにサンタンダーは結構な数に増えていました(ただ、サンタンダーは1年栽培球だと2芽の割合がかなり高いらしく、2年栽培が中心になっていくと思います)。あと、バンザンテンと同じくピンクシークレットも販売球用にすでに植わっていました。日本にはこの品種は既に認知されていますが、他国では、台湾あたりにおそらくマルコの代わりとして売り込んでいくのだと思います。輪つきがそんなに良くないブルレスカやピンクシークレットなどはこの産地に向いているのかもしれません。

→根の生育も旺盛

→晴天が続いていました

2011年ニュージーランド産は、視察時まではかなり順調にきていたので、あとは掘り取りさえ上手くいけば、作が悪くなることはほぼないだろうという印象を持ちました。
それと、毎回のことになりますが、南半球産については産地と生産者と生産される品種の特性の違いをうまくお客様に理解していただくことが必要になります。何かご質問やご不明な点がございましたら何なりとお問い合わせください。

 

片岡靖志