(45) カンアオイの珍花

カンアオイ

 カンアオイのスペシオーサム(Asarum speciosum)という花である。北米原産の珍しい花だという。こんなに“きれいなカンアオイ”を見たことはない。

 カンアオイの実物と最初に出会った時には驚いた。中越地方の山中でコシノカンアオイを見たのである。葉はハート形で光沢があり、紋様も美しかった。しかし、花は黒褐色というか黒紫というか、それにあの硬くて厚い花弁だった。だから、正直のところ変な植物,奇妙な花という強烈な第一印象だった。

 このようにカンアオイの花は独特であると思う。とくにその花弁である。多くの植物の花弁を紙に例えれば、カンアオイのそれはまるで厚紙のようだ。さしずめクリスマスローズの花弁はプラスティックだろうか。

 ところで、ちょっと待て!クリスマスローズの花と言われる部分は、正確に言えば花弁ではなく萼である。植物事典で調べると、カンアオイの場合も似ており、花と思われているのは実は萼片で花弁は退化したのだそうだ。

 だからと言って「この花は花弁、あの花はホントは萼・・・。」などと厳密に言い始めると、シャバが少し面倒になる。それよりは「ああ,世の中にはこんな花もあるんだなァ。自分が知らない花はまだまだある。植物世界のこの奥深さや多様性が面白い。」というくらいに捉えた方がよいのではないか。ともあれ、このカンアオイは花の多様性といったテーマでは取り上げたい珍品の一つである。

 なおこのスペシオーサム、残念ながら北米の原産地では既に絶滅してしまったという。栽培ものしか無いらしい。

絶滅したら、日々好日、日々感謝 とばかりも言ってられないが・・・。 (E.O)