(129) 百両金(カラタチバナ)-其の四

カラタチバナ

 写真は百両金「麒麟錦(きりんにしき)」である。一見したところ 奇妙な化け物みたいだが、観察するとダイナミックで複雑な葉芸なのだ。

 葉がうねったり巻き上がったり、その縁がギザギザに波打ったり、鮮やかな斑も入ったり・・・。知らない人が見ると、ウィルスにでも侵された植物のように受け取るかも知れない。筆者も初めて目にした時にはそう思った。

 しかし、ある愛好家向けの雑誌には、この麒麟錦が“雷雲をつかむような激しい迫力を感じさせる稀代の銘品”と称賛されていた。

 ところで 親しい栽培家に聞いたところ、この‘銘品’には秘話があった。「麒麟錦」はいったん途絶えたらしい。しかし、関係者の努力で復活させたのだという。それによれば、戦後「麒麟錦」の現物がまったく無くなった。それで栽培者や愛好家の間では、「幻の麒麟錦」と言われるようになった。だが幸運だったのは、その親の品種が分かっていたこと。また、新潟に偶然その白黒写真が残されていたことである。

 島根ではそれらを手がかりにして、その実生苗から再び「麒麟錦」を蘇らそうと、栽培に励んだ人々がいた。そして 何度も実生の育苗・選抜を繰り返すうちに、再び生み出すことが出来たのだという。

 実(み)はほとんど付けない。愛好家でも見た人は稀にしかいないという。まあ これだけの葉芸で十分なのかも知れない。

 さて、これまで紹介して来た百両金はごく一部である。けれども、それらが独特の植物世界を展開すること、また何百年もかかって伝統園芸の中から生み出されて来たこと、こうした点には改めて驚く。

やっぱり伝統園芸植物もあって 日々好日、日々感謝。 (E.O)