(246) 風鈴ツリバナ

風鈴ツリバナ

風鈴ツリバナ

 ある展示会で目に留まった植物である。風鈴ツリバナの「紅奴」と名付けられていた。この紅い実の色・形・下がり具合,枝ぶりなど、なかなか風情があった。それに落葉する直前の黄葉とのコントラストも鮮やかだった。見ていたら、何だか楽しくなってきた・・・そう、モビール装飾を連想したのだ。

 何といっても実(蒴果)が大きい。ふつうのツリバナの二,三倍はあろうか。また 実の形も異なる。ツリバナの実は丸っこく、それが五つに裂ける。それに対して、この風鈴ツリバナの実は、升の四辺を押しつぶして四つの角々が尖ったようになり(これを“翼”という)、それを逆さにしたような姿なのだ。

 数日後にある温室で、展示会のものよりちょっと小ぶりの「紅奴」を見つけた。こちらはオレンジ色のきれいな種子を、紅色の裂けた実からぶら下げていた。これと展示会に飾られたものとの違いは、果実の熟度である。展示品の方のそれが進んでいたのだ。だから、もう種子が下がっていなかったのだろう。

 この果実の内部は四室に分かれており、一室から一個の種子が吊り下がる。その種子は果肉のような軟らかい皮に包まれている。これがオレンジ色なのだ。しかし、種子は白っぽいのだそうだ。姿・形の面白さといい、色彩の妙といい、なかなか楽しい植物なのだ。

 インターネット上で検索していたら、あるマニアらしき人物がヒロハツリバナの選抜品と述べていた。しかし、出自も含めて詳細は分からないようだ。謎にも包まれている!

見ていて楽しくなる植物がもっとあっていい。 日々好日、日々感謝。 (E.O)

 

(245) 瓢湖(ひょうこ)④

カワウ

 瓢湖にいるのは白鳥や鴨類だけではない。数は少ないが、他の鳥もいる。その一つが写真のカワウである。

 瓢湖は野鳥保護の面などから、人が入ることのできる西側以外は立入禁止になっている。だから、対岸には行けないし、沖のハス群落も邪魔して、向こうの様子はよく見えない。その上、筆者は近視で乱視なので、沖さえも裸眼ではくっきりとは見えない。だから、湖岸に立ったらメガネをかけ、左右に視線を動かした。他に鳥はいないだろうか?「んっ?!」沖のハス群落の手前に、黒っぽい四羽の鳥を発見した。彼らは水面から突き出た杭の頭に止まっていた。

 その日は望遠のカメラを持って来ていた。それを肩からぶら下げていたので、メガネを外し裸眼でそのカメラのファインダーを覗いた。望遠レンズの焦点を彼らに合わせる。・・・カラスとはちょっと違うようだし・・・。「ウかなあっ・・・ウならカワウかなァ」 彼らは眠っているのか、なにやら元気の無さそうな様子だった。

 帰ってから、例の鳥博士に問い合わせた。「カワウで正解でしょう」ということだった。ただ、カワウとウミウは遠目ではほとんど区別がつかないらしい。それに、カワウは淡水域だけに、ウミウも海辺にばかりいるとは限らないそうだ。その2種の相違点はくちばしの付け根を観察しないと、厳密な判定はできないらしい。でも瓢湖という場所からすると、カワウで間違いないでしょうとのこと。

「鵜飼いの時だけ話題にせんといてや!」帰りぎわ、彼らが叫んだような気がした。連中、関西から来たんかなァ。

日々好日、日々感謝。 (E.O)

(244) 瓢湖(ひょうこ)③

瓢湖(ひょうこ)

瓢湖(ひょうこ)

 瓢湖では白鳥以外にも、多くの種類の水鳥が見られる。とくにカモ類は多く、7種ほどいるようだ。説明板などにはマガモ,オナガガモ,ホシハジロ、ヒドリガモ,ミコアイサ,ハシビロガモ,キンクロハジロが紹介されている。また、その数も三万~五万羽という。彼らをよく見てみると、羽の模様がうっとりするほど美しいのもいる。

 ところで、もともと彼らは狩猟から逃れるために、この瓢湖に集まって来る。彼らにとって、ここは避難場所なのだ。いや、それ以上 だろう。エサの心配をする必要もないからだ。毎日 白鳥向けに餌付けのエサがまかれる。けれど、前述したように昼間は白鳥たちがいなくなる。だから まかれたエサは、大半は彼らの胃袋に入る。エサ取り競争はあるにしても、彼らにとってはまさに楽園と言えるのではないか。

 さらに 彼らのエサは、その餌付けのそれだけではない。昼間 訪れる観光客が投げ与える“水鳥のえさ”(1袋 100円で販売している)もある。だいたい白鳥が不在なので、がっかりしてすぐ帰るというお客さんは少ない。“水鳥のえさ”を買い求め、しょうがないけれどカモたちに向かってそれをまく。彼らは、カモたちがその水面のエサを求めて殺到する様子を面白がる。そうした人が少なくない。

 なお、写真(下)でカモたちがちょこんと体を休めているのは、餌付け用の桟橋である。そこに、こうして数十羽が止まっている。まだ、夢見のカモもいるようだ。

田んぼが積雪に蔽われると、白鳥も出かけていかない。こうなると、カモにとっては 日々緊張、日々競日。 (E.O)

(243) 瓢湖(ひょうこ)②

瓢湖(ひょうこ)

瓢湖(ひょうこ)

 何十羽もの白鳥が、湖面から次々に飛び立つこの光景はなかなか見ごたえがある。下の写真がそれだ。離陸いや離水した白鳥たちは翼を大きくはばたかせながら、飛び立って行く。実に優美な姿なのだ。前回こうした場面を撮影できなかったので、次の日曜日 朝早くまた瓢湖を訪ねた。

 彼らの離水までの一連の動作も、興味深い。水中の両足と翼を連動させるのだろう、まず体を水面から持ち上げる。体が上がったら、足をばたつかせながら翼をバタバタさせながら、水面を走り出す。この姿はちょっと不格好だが、水しぶきと水音をあげながら助走するのだ。そして、「えいっ!」とばかりに体を浮かせる。(上の写真で左側の一羽が、助走の体勢をとり始めている。)

 彼らが離水する姿には、力強さすら感じる。そして いったん水面を離れると、大きな翼をゆったりとはばたかせながら空に舞い上がる。こうして彼らはグループごとに分かれて、何十羽がぶつかることなく、離水していく。数多くの羽音が伝わってくる。その情景は圧倒的で、見ていてもあきない。

 そして 、彼らは東側に弧を描きながら高度を上げていく。周りに何も障害物がなければ、直進するのだろう。しかし 瓢湖の周囲には、数軒の住宅と多くの樹木がぐるりと並んでいる。だから離水しても、直進するわけにはいかないのだという。白鳥は大型だから、ツバメのように高度を急に上げ下げできないのだ。彼らのこの飛び立つ姿を一度見たら、クセになるかも知れない。

ところで、なぜ人は翼を持たなかったのだろう。日々鳥日、日々飛翔。 (E.O)

(242) 瓢湖(ひょうこ)①

白鳥の湖-1

白鳥の湖-2

 新潟市の東側に隣接する阿賀野市には、今や国際的にも知られる瓢湖がある。そこは日本で最も有名な白鳥の飛来地だろう。ここは昭和29年に国の天然記念物に指定された。さらに、平成20年にはラムサール条約の登録湿地にもなった。小さい頃、何度かここに連れて来てもらった記憶がある。今回は十数年ぶりに訪れた。

 この日の管理事務所の掲示板には、白鳥飛来数が2,980羽と記されていた。「もう、そんなにお客さんが来てるのか」もっと遅くなってピーク時ともなると、5,000羽にも達するという。

 ところが、上の写真のように昼間はまるでもぬけの殻。白鳥たちがひじょうに少なく、鴨類が目立つ。実は白鳥たちは毎朝、明るくなると数羽から数十羽のグループを組んでここを飛び立ち、近隣の田んぼに散る。そして、そこでエサ取りと食事に終始する。エサというのは、刈取りで回収しきれなかったり、落ちこぼれたモミである。だから この時期、新潟平野の田んぼのあちこちで、こうした白鳥の採餌風景を見ることができる。下の写真は、瓢湖から 数kmの田んぼで見つけたそうした姿である。

 そして 夕方になると、彼らはねぐらの瓢湖に戻って行く。隊列を組んでクワァ,クワァという独特の澄んだ甲高い声をあげながら、空を移動して行く。だから この時期、われわれはその優美な飛翔を憧れに似た心持ちで、ときどき目撃する。筆者などはその声が大きいと、家の中にいても思わず飛び出すこともある。

朱鷺は佐渡に任せて、白鳥は冬の新潟平野の魅力を増してくれる。日々鳥日、日々飛翔。 (E.O)

(241) 初雪と紅葉

上川の初雪

 山里の晩秋の風景である。場所は東蒲原郡、今月上旬の写真だ。奥の山で頂上のすぐ下の斜面が、部分的に白くなっている。おそらく初雪だろう。また 手前の山では、遅まきながら落葉樹の葉が色づいてきた。集落の前で大きく曲がる清流は常浪川(とこなみがわ)である。阿賀野川に注ぐ支流の一つだ。こうした山あいの地では、まもなく長い冬を迎える。

 ここにはゴルフ場からの帰りに通った。といっても、 昼間のプレイには参加せず、そのクラブハウスでの表彰式・懇親会に加わった。当然、その晩はそこに宿泊となったが、還暦を迎えた仲間たちは遅くまで賑やかだった。

 その帰り道、急に御神楽岳(みかぐらだけ 1,387m)を間近で見たくなった。それはこの地域の最高峰であり、新潟・福島の分水嶺でもある。以前にも紹介したが、「下越の谷川岳」とも呼ばれ、切り立つ大岩壁や痩せ尾根を有する。高校時代、緊張しながら一度だけ登った印象深い山だ。

 それで、登山道に通じる道路を進んで行った。最奥の集落が過ぎたら、ほどなく舗装が終わった。その上、人があまり通らないせいか、道が低木や草で蔽われてきた。また、至る所に「熊出没!」の立札である。もし難に出会うと、皆に迷惑をかける・・・そう考え、引き返した。

 その帰路、道路から見えた山の白い薄化粧に目が留まった。それで車を止め、撮影をしたというわけだ。ここを後にして、眺望のよい場所で振り返ると、御神楽岳はもう六合目くらいから白くなっていた。

今朝は冷え込んだ!5℃を下回ったもの。だけど 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(240) ハベナリア・メドゥーサ

ハベナリア・メドゥーサ

 写真の花の第一印象は、踊る白いジョロウグモである。もう少しきれいに表現すると、白い妖精たちのダンスといったところか。人によっては、宇宙人が手を広げて通せんぼをしているように見えるかも知れない。

 独特の美しさを持ち、どこか神秘さを秘めた花。あるいは、こんな花は人間の想像が及ばない領域に属するもの、人間には絶対に創り出せない造形物、とも思った。これまで抱いていた花のイメージを変える花だと思う。この細くて白い繊細な花弁は、何と形容すればよいのだろう?

 咲いていたのはこの一鉢だけ。初めて見るこの花に目が留まった。魅入られたように、しばし観察。場所は六甲山系の一角にあるビニールハウスである。薄暗いハウスの中なので、メガネをかけて観察し直しても、さっぱり見当がつかない。「・・・もしかしてサギソウの仲間?」くらいしか頭に浮かばなかった。結果的には予想は当たったが、栽培者の説明を受けねば、それ以上のことは分からなかった。

 日本に自生するサギソウの仲間で、東南アジアの熱帯雨林に生えているのだそうだ。ラン科ミズトンボ属の植物だという。学名はハベナリア・メドゥーサ(Habenaria medusa)。

 筑波実験植物園の記事によれば、日本国内では2003年に初めて開花に成功した珍品らしい。栽培者の話では、咲いている期間がとても長く、観賞期間は2ヶ月くらいは大丈夫だろう、という話だった。たしかに花穂の下の方の花は開いているが、上の方はまだ閉じていた。

六甲で世にもまれな花に出会えて 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(239) 花のある生活③

花のある生活

花のある生活

 ゼフィランサスの植え込みである。延長は10m近くはあったろうか。生育にはあまり適するとは思えない環境で、こんな風に元気に育っていた。そして、それがさりげなく良い花を咲かせ、ちょっと良い景観をつくり出していた。石垣,コンクリート側溝,アスファルト道路といった無機質の構造物の間で、そのゼフィランサスが風景に潤いと柔らか味を与えていた。それが気に入った。これも出雲地方を訪ねたとき、目にとまった風景である。道路に面した民家の石垣下の植栽だ。

 上述したように、植えられた場所は決して良好とは言えない。石垣の尻と側溝の間のこんなすき間のような帯状の土地なのだから。また、土壌についても掘り下げたわけではないが、表土は小石混じりの砂土だった。その下には肥沃な土が入っているのだろうか。また、排水も悪くないのだろうか。まあ、生育状況がこのようにまともなので、そう信じるしかないが。

 今年の夏はこちらでも猛暑だったそうで、その厳しい時期も乗り越え、こうして見事な花を咲かせた。そして 家の人はもちろん、道行く人たちの目も楽しませていた。大したものである。

 さて、このゼフィランサス(ラテン語読みではゼフィランテスらしいが)、和名はタマスダレといい、比較的昔からあった球根植物だ。ヒガンバナ科で、原産地はアメリカを中心とした西半球の温暖地帯である。そこに約35種が分布しているという。花色は白の他に、ピンク,黄色,オレンジなどがあるが、白以外はまだ実物を見たことがない。

家の前に花あれば 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(238) 伯耆大山

伯耆大山

伯耆大山

 二枚の写真はいずれも伯耆大山である。中国地方の名山であり、最高峰でもある。標高1,729m、独立峰なのだ。この日は快晴ではなく、絶えず山頂に雲がかかったり消えたりしていた。

 もともと火山で、古くから信仰の山でもある。そして 日本百名山はもちろん、日本四名山(富士山、立山、御嶽山、大山)にも挙げられるのだという。

 さて二枚の写真だが、その時間差は5分もなかったろう。とにかく目まぐるしく雲行きが変わった。上の写真は山頂に雲が少しかかっていたが、たまたまパラグライダーが飛んで来たのを発見した。「おおっ、シャッターチャンス!」とばかりに、山容と一緒に捉えたものだ。拡大して見てもらうと、右上の隅にそれが認められると思う。

 4年前にも、これと似た風景を目にした。ただ 当時はブログをまだ始めていなかったので、パラグライダーしか撮影しなかった。鳥取砂丘ほどではないにしても、大山の辺りでもパラグライダーが盛んなのだろうか。今回のこの写真は大山もパラグライダーも捉えているが、手前と中ほどの白っぽい建物と電柱がややうっとうしい。一方、下の写真はわずかの間 雲が山頂から消えた時に写したものだ。やっぱり雄大ではあるが、中腹に見える二,三ヶ所の何か設置物のようなものが、これまたちょっと気になる。

 とは言え、 これまで一度としてくっきりとした大山の姿を目にしたことはない。しかし、今回はわずかの時間だったが、雲のかからない伯耆大山を眺めることができた。

名山と女性は適切な距離から眺めるべし?! 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(237) 宍道湖SA

宍道湖SA

宍道湖SA

 上の写真で広がっている水面は宍道湖である。山陰自動車道(下り線)の宍道湖SAから撮影したものだ。こちら側は湖岸のすぐ近くまで人家が迫っていたが、湖の見える風景というのは悪くない。

 宍道湖の水際までは行ったことがない。いつも近くを車で通り過ぎ、車窓の景色として眺めるだけだった。けれど、今回はそれが望める場所で休憩したので、初めてその湖面を写真に収めた。

 下の写真は、その時足もとにいたバッタである。上の写真をいい角度から撮ろうと、足もとを動かしていたら、偶然そこにいたのだ。「踏んじゃいけない!」。それが1匹,2匹ではない。全部で8匹もいた!皆で左側に移動中だったようで、撮り逃がしたものもいた。幼虫らしきバッタも見えたが、親子だったろうか。前号でも昆虫は取り上げたが、あの通りほとんど知識がない。おそらくバッタかイナゴなのだろう。

 先月前半、島根県まで出張した。例年通り、片道900km近くの行程を車で動いた。北陸道~名神~中国道~米子道~山陰道の五つの自動車道を通る。ここ数年の恒例なのだが、年に最低1回はこのコースで出雲地方に足を延ばしている。しかし、これまで観光地は訪ねたことがない。ただ昨年、景気回復を神頼みするために出雲大社に初めてお参りした。

 ところで、この宍道湖の東隣にある中海には大根島(だいこんじま)がある。新潟と並ぶボタンの産地で、当社も取引先が何軒かある。部長などは度々訪れているが、筆者はまだ行ったことがない。

大根島を含め、いつかは訪ねてみたい山陰路である。日々好日、日々感謝。 (E.O)