(14) 五重塔と昼の月  (京都で-③)

五重塔と昼の月

 京都では東寺も訪ねた。学生時代この近所に友人のアパートがあり、時々そことわが下宿とを行き来した。その途中、境内に“弘法さん”(縁日)がたっている時には、何度か立ち寄ったことがある。それで詳しい由来も知らずに、東寺には庶民的なお寺さんというイメージを抱いていた。しかし・・・恥ずかしながら今回、たいへん由緒正しい名刹であることを認識した。 

 東寺の創建は平安京の建設時にまでさかのぼり、「教王護国寺」という正式名称を持ち、弘法大師と縁が深い。国宝や貴重な文化財も多くあり、今や国史跡指定だけでなく“世界遺産”にも登録されている。 その五重塔は国宝で、木造の塔では日本で一番高いという。

 訪ねたのがたまたま特別公開の期間中で、その五重塔の一階(初層)内部が見学できた。そこに足を踏み入れる前、壮麗な五層の屋根をしばし見上げていたら、たまたま真昼のお月様に気づいた。屋根の「相輪(そうりん)」も姿がいい。(相輪は屋根の上のアンテナのように見える、仏教的な意味を持つ構造物。)そして、上弦の月と塔とがほど良い位置にあった。そこでシャッターを押した。

 ところで五重塔の初層内部には、立派な如来様と菩薩様が何体か安置されている。また柱や壁や天井などには、色が褪せてはいるものの龍や蓮などが描かれている。かつては極彩色が施され、さぞ美しかったことだろう。 多くは述べないが、金堂(国宝)や講堂(重文)にも心引かれる素晴らしい仏像がおられる。JR京都駅から歩いて行ける場所なので、ぜひ寄られることをお薦めする。

日々好日、日々感謝。  (E.O)