(652) モンゴル日記(367)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて115 】

 森の中にはこうしたシランの群落があちこちにあった。その時はそれを単純に喜んだ。しかし後で,せっかく遭遇したシランの見せ方としては全くヘタで、こうやって同じ構図の写真を上・下に並べるとは芸のないことをしたなァ、と反省しながらこの号を書く。

 それはさておき,針葉樹の森林はここでは東の方より、西の方に展開されていた。東側は岩が多くて樹林が形成されないのだろう。写真はいずれも東の方から西の方に向かって撮影したものだ。ご覧の通り,西側は奥が見通せないほどの森となっていた。

 さて上の写真のJ君について語ろう。彼はもちろんモンゴル人だが、ふだんはチェコに住んでいるという。勤務先はプラハのブティックだとのこと。販売ではなく、何か企画開発的な部門にいるらしい。

 こうした例はあるようで、東欧で働くモンゴルの人が時々いるのだ。兄弟姉妹があちらで働いていてナーダム(夏祭り)などに帰って来る例を知っている。だいたいJ君がそれだ。かつての社会主義国同士で、東欧諸国とは関係が深いのだ。

 さてJ君は男兄弟3人の真ん中だという。 兄上は医療関係の仕事でカリフォルニアで生活しているらしい。また弟さんは東京に住んでいるという。けっこうインターナショナルな兄弟なのだ。

 なお蛇足ながら、下の写真は日本人だ。そう筆者である。

 ときどき東欧の話題、ときどき日本の話題。 (K.M)

(651) モンゴル日記(366)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて114 】

 さて左岸に渡った。岸辺に抽水植物などが全くない右岸と違い、こちらにはヨシやガマの仲間が水際からビッシリと生えていた。だから船首を岸に寄せることができず、浅瀬で船を降りざるを得なかった。数日前この茂みの中にヨシキリのような姿を目撃したのだが・・・。

 さて船を降りた筆者とJ君は、キャンプのある対岸の方を振りかえった。1時間後に迎えに来てもらうことにした。それで乗って来たボートが去って行って行く。そして,向こう岸では8人のメンバーがこちらを眺めていた。上の写真の構図である。

 こうした光景を眺めていたら、”置いていかれた”ような錯覚を覚えた。やがて,ちょっと侘しい心境になる。何だか島流しの流人のよう・・・。J君はどんな気持ちなのだろう?! けれどそれも束の間、岸から斜面を上って平地に出ると、多くの花々が筆者たちを迎えてくれた。これは予想外のうれしい出来事で、これが気分転換のきっかけとなった。

 下の写真のように、まず目に飛び込んできたのは青い花だった。これは日本でいうと,おそらくフウロソウの仲間だと思う。この青い花の背後で、赤い蕾を付けているのがヤナギランだった。これはこの北モンゴルの山地,草原でときどき見かけた。しかし,ここのヤナギランは他所では見られないほど、広い面積であちこちに群落を形成していた。

 対岸に花あり、対岸に潤いあり。 (K.M)

(650) モンゴル日記(365)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて113 】

 城砦から戻って来て、昼食をとった。そのときB氏から、次のような提案があった。つまり,このキャンプの管理人からボートを借りる約束をしてある。それで,それに乗ってシシケッド川の向こう岸に行きましょう?というのだ。

 その提案に対して、若者たちは答えなかった。乗馬には全員がつき合ったのに。そのうえ他の年配の人たちからも声が上がらなかった。しかし,借りたボートを返すわけにはいかない。結局、筆者といわば年長の若者? J君が乗ることになった。それはまるで”志願兵”のようだった。

 やがて管理人が折りたたみボートを岸辺に運んで来て、目の前でそれを膨らました。漕ぎ手はふたり、その管理人と結局B氏だった。やがて”志願兵”二人がそのボートに乗り込み、離岸した。

 もちろん浮き輪などは備えられていない。まァ,筆者は中学時代には水泳部に所属していたから、泳ぎに自信がないわけではない。それにこのシシケッド川は深そうではあったが、流れが速くないようだった。パートナーのJ君は泳ぎの方はどうなのだろうか?そんなことが頭をかすめた。

 それはともかく,川の中ほどまで来てみると、写真の上・下のように沈水植物がびっしり生えていた。(失礼!写真がいずれもピンボケで・・・水際の撮影はチト難しい。)繁茂していたのは全部ヒルムシロ属の植物と思われた。

 はじめて渡河、はじめて対岸。 (K.M)

(634) モンゴル日記(349)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて97 】

 写真上はイワレンゲの仲間だと思う。つまりセダム類。これはツーリスト・キャンプのまわりで、乾燥しがちな場所なら,あちこちで見かけた。シシケッド川の岸辺でも、また例の断崖の手前の小段などにもよく生えていた。

 草丈はせいぜい20cm。地面にベタッと貼りついていて、花としての色香はまったく漂わない。しかし見るからに,たくましさや強靭さといったものを感じさせてくれる。冬にはマイナス40℃以下となり,夏には乾燥激しいこの地で、ズーッと生き抜いているのだ。

 一方、下の写真はあのアカツクシガモである。ただし正直言うと、この写真は以前この紙面で用いたことがある。(614号)でだ。そこでも述べたが、この一家は全部で11羽いるはずなのだが、この時は1羽欠けていたようだ。父鳥みたいだが。

 この2枚の写真とも、同じ日の”朝の観察・撮影散歩”のときに撮ったものだ。それは、他のメンバーが起き出して来る前の1時間ほど、カメラを首からぶら下げてキャンプ周辺を歩き回るのである。そこには清々しい空気が満ち、心地よい時間が流れる。それに万歩計の歩数も稼げる?!

 ところで前日、Bさんから「シャチョーの分も馬を頼んでおいたからね。明日は必ず参加してね。馬は11時頃来るからね」と言われていた。強く遠慮したのだが、乗馬に誘われていたのだ。気が重かった。

 日々花々、日々鳥々。 (K.M)

(598) モンゴル日記(313)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて61 】

北モンゴル最奥部を訪ねて61

北モンゴル最奥部を訪ねて61

 上・下の写真はいずれもテングス川の川原に生えていた植物である。だいたい日差しが強く乾燥しがち,たまに増水ありの場所だ。が,健気にも花を咲かせていた。

 上はナデシコの仲間と思われる。至る所にあったわけではなく、ポツンポツンとあった。ただ,この辺りに咲いていた花で黄色は何種類かあったが、赤系はこれしかなかった。

 どうやら,ここでは群落を成す植物というのは見当たらなかった。ただ対岸にはツツジ類と思われる木本だけが、とぎれとぎれに列状に生えていたが。

 さて,下の写真はおそらくマンテマ類だろう。この連載でも以前書いたが、その時には草原で咲いていた。しかし,これは川原という過酷な場所で踏ん張っている。この植物の生育環境の幅は広いのかも知れない。

 ところでちょっと観察してみると、これらのナデシコもマンテマも、石と石の間の土壌が溜まった場所で生育していた。彼らはこうした場所を選んで根づいたのだろう。

 考えてみたら、ナデシコもマンテマも同じナデシコ科植物であった。筆者の判定が間違っていなければ、前者はナデシコ属,後者はマンテマ属となる。同じ科の植物を意図してここに載せたわけではない。偶然そうなっただけで、ちょっと不思議に感じた。

 川原で遊んでいると、せせらぎの音に混じってトビの鳴き声も聞こえてきた。あーぁ,日々のんびり、日々ゆったり。 (K.M)

(589) モンゴル日記(304)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて52 】

北モンゴル最奥部を訪ねて52

北モンゴル最奥部を訪ねて52

 写真は前号のヤナギランと共に、峠で咲いていたキキョウである。そこに広がる森林は針葉樹が主体だったが、落葉樹も混じっていた。明るい林相だったが、多少でも湿気を保っているのだろう。乾燥が強い場所では、ヤナギランもキキョウも生育が難しいだろうから。

 上の写真で所々に綿毛状になっていて、ひょろっと伸びているのは花の終わったオキナグサだ。これもモンゴルでは珍しい植物ではない。

 ところで,この「キキョウ」はキキョウ科植物には間違いないようだった。が,キキョウ属ではないように思えるとのこと。詳細なデータに基づかないから正確なことは言えないが・・・というのはO先生の指摘だ。また,ついでに推測すると、下の写真でキキョウの後ろでアクセサリーのように咲いている白花はハナシノブの仲間かも知れない、ともおっしゃっていた。ともあれ,このキキョウ、やはり清楚で品がある。

 ところでBさんの話では、森林を横断するこの峠の先には湖があるという。「ほっ,うれしいね」。オフロードに入って十数時間。悪戦苦闘しながら揺られに揺られ、ボロ橋をいくつも渡り,”河川”を何ヶ所も横断して来た。しかし、湖はスタートのとき以来だ。

 けれど,その湖にたどり着く前に,また障害が出現するのだった。それも横断するのに,これまでで最も困難そうな水場であった。日々、一難去ったらまた一難。 (K.M)

(588) モンゴル日記(303)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて51 】

北モンゴル最奥部を訪ねて51

北モンゴル最奥部を訪ねて51

 おっかなびっくり,あの木橋を渡りおわってから約40分。走り続けていたら、ちょっとした峠に着いた。標高はあまり上がっていなかったが、そこには明るい森林が広がっていた。

 実は橋を渡ってからしばらくして、前を走るBa氏のクルマと筆者たちのクルマが、後続の2台と大きく離れてしまっていた。後ろを走っている彼らの姿が見えないのだ。そこでこの峠で待つことになった。

 ここには立派なオボーがあった。それで筆者たちはまず、それにお参りをした。いつもやるように小石を3個手にし、オボーの周りを1回まわるごとに1個づつ放っていった。

 後続2車が追いつくまで,けっこう時間が生まれた。それで付近の森を,用足しがてら散策していたら、写真のようにヤナギランとキキョウの集団を見つけた。

 ヤナギランは以前にも記したことがあるが、こちらでは珍しいというほどでもない。昨年の釣行の際にもあちこちで見かけた。花は派手ではないが、温かみを与えてくれる。

 「この先はどうなるんですかね?スマホは全く通じないし・・・。会社と家のことがやはりちょっと気にかかるし・・・」。と,B氏にこっそり訴えた。そして尋ねた。すると彼は、「この調子だと,夜も走らざるを得ないでしょうね・・・。でも心配しなくていいですよ,シャチョー。Baさんはしっかりしているから」?!

日々一進一退、日々一喜一憂。 (K.M)

(579) モンゴル日記(294)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて42 】

北モンゴル最奥部を訪ねて42

北モンゴル最奥部を訪ねて42

 上の写真の植物は、昨年のエグ川ツアーでも確か紹介した。明るい林間や林の縁で咲いているが、遠くからでもよく分かる。それは実際の花色がもっとオレンジ色に近く、とても目立つからだ。そして,ご覧のように美しい。

 これはキンポウゲ科のキンバイソウの仲間である。日本の高山植物シナノキンバイなどのグループである。経験からすると、この花はモンゴルでは比較的容易に目にすることができる。あちらの文献によれば、モンゴルではこの花の部分が薬用として使われているらしい。

 また下の写真は、大雑把にいえばリンドウの仲間である。が,詳細はよく分からない。ただO先生のお話だと、これは日本でいうトウヤクリンドウに近いものではないのか、ということだった。たしかに花色の青がうすかった。それとモンゴルの文献によれば、あちらの民間伝承薬としてリンドウ類も広く用いられているようだ。

 ところで,日本のリンドウの多くは夏の後半から秋に咲く。しかし,このリンドウは既にこの時期つまり7月中旬に咲いていた。それに今回のツアーで見た他のリンドウ類も開花期だった。(だいたい花を咲かせていたから見つけたようなものだ。)

 冬の訪れが早いせいだろう、花は早めに咲き早目に種子をつけ、次代へとつなぐのだろう。植物も日々必死、日々懸命。 (K.M)

(578) モンゴル日記(293)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて41 】

北モンゴル最奥部を訪ねて41 -03

北モンゴル最奥部を訪ねて41 -04

 写真の上・下の花は山野を歩きまわってやっと見つけた・・・と,いうのではなかった。ある場所で皆が休憩を取っていた時のことだ。その場所からそう遠くない、林の縁の草原に咲いていた。あたりを散策していたら、たまたま発見したのだ。

 「おっ!こりゃ何じゃ・・・?」。最初に上のうすい青の花を、その後すぐに下の鮮やかな濃い青の花を見つけた。うすい青花と濃い青花の2種類は、それぞれ小群落を構成して隣接と言ってよいほどの位置で咲いていた。「色違い」の花を開いていたのだ。

 正直のところビックリした!こうしたケースもあるんだなァ。後で振り返ると、この2つは今回の旅で最も印象的な花となった。その集団の写真もそれぞれ撮影してあるが、紙面の都合上この2枚しか載せていない。

 草丈は30~50㎝ほど。つやのある花弁の大きさは2㎝前後、はじめて目にした花だった。帰国後に関係資料をあさった。推測でどうやらシソ科のタツナミソウの仲間ではなかろうか?ということで、結局は今回もO先生に判断をお願いした。が,「シソ科は間違いないでしょう。でもタツナミソウにしては大き過ぎると思いますよ。花や姿は似ているけれど。」とのこと。これも引きつづき調査中である。

 探せばまだまだ面白い植物にぶち当たるかも知れない。日々好花、日々感動。(K.M)

(577) モンゴル日記(292)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて40 】

20161105-02

20161105-01

 これから3回にわたり、往路で出会った花についてその一部を紹介しようと思う。

 まず上の写真は(567),(568)号で述べた”峠”の、その周辺で見つけた植物である。樹林の縁といった場所で、どちらかと言うと半日かげで咲いていた。草丈は20,30㎝。花は小さく白い花だったが、実に可憐で印象的だった。気になったので撮影しておいたものだ。

 帰国してから、O先生にお尋ねした。植物のことで見当がつかなくなると,いつも頼ってしまう。なにしろ植物分類の大家なのだから。ともあれ,先生からご教示いただいたところでは、この植物はサキシフラガ(ユキノシタ科)の仲間だろうとのこと。

 一方、下の写真の植物は上記の”峠”に至る手前、道沿いの日当たりのよい斜面に咲いていた。草丈は50~100㎝くらいあったろう。爽やかな青い花が多く付き、遠くからでも認識できた。どうやらシソ科植物のようだった。

 それ以上の詳しいことは、現時点ではよく分からない。ただ道中では,この植物をときどき見かけた。概してモンゴルにはシソ科植物が多く分布しているように感じる。

 日本ほど植物相は豊かではない。しかしモンゴルの地には耐寒性と耐乾性を備えた,たくましくて美しい花々が生きている。日々好花、日々鑑賞。 (K.M)