(185) ヒューケレラ

ヒューケレラ写真・画像-1

ヒューケレラ写真・画像-2

 この花は遠くからでも目立った。農場の栽培品だが、咲いている期間はこの一角がパーッと明るくなっていた。ヒューケレラという。

 ヒューケラ(和名:ツボサンゴ)とティアレラ(和名:ズダヤクシュ)との雑種である。ヒューケレラという名称はそこから造語されたようで、属間交配ということになる。

 どちらもユキノシタ科植物で、ヒューケラ属はそのグループの大半が北米に分布している。一方、ティアレラ属も5種のうち4種がこれも北米に、1種だけが日本を含む東アジアに分布する。

 そうした理由だけではなかろうが、いずれもアメリカが栽培・育種の中心らしい。とくにオレゴン州などはこれに限らず、花卉園芸が盛んな地と聞く。うちの部長などもたまに訪れる。

 さて、この写真のヒューケレラは“ブリジェット ブルーム”という品種である。正直申し上げると、うちの専売品ではある。育種家=アラン・ブルーム氏が作出したものだ。おそらく世界で最初に属間交配を成功させた品種だろう。世に出てから久しいが、いくつかの特長を持っていて人気を保っている。

 まず、赤茶色を帯びる葉が美しい。株が小さくても、立ち上がる花茎が多い。鉢物でも花壇植えでも、あるいは切花としても使える。花茎は細いが、丈が40~50cmにも達する。また、個々の花は小さいが花付きが良い。さらに、この小さな花弁は色が白,ピンク,白,ピンク・・・と交互に出る。下の写真でもお分かりになろう、バイカラーなのだ。魅力的な小輪花である。

恐縮ながら弊社の植物を宣伝させて頂き、日々商売、日々感謝。 (E.O)

(184) 海辺の風景

海辺の風景

 一年ぶりくらいだろうか、新潟海岸に来たのは。しかし、その景観にはがっかりした。

 街なかでの用事が早めに終わった。それで程近い海を見たくなり、車を走らせた。天気は良かった。そして、周辺には様々な公園施設が整備されているせいか、ウィークデーにしては人が多かった。何組もの親子連れが滑り台やブランコで遊び、サイクリングロードでは自転車乗りが疾走していた。

 車を駐車して、海辺に向って歩いて行く。青い風景が広がってくる。「おおっ、久しぶりの日本海!」。と思ったのも束の間。まず目についたのがこの自販機2台である。おそらく浜茶屋が置いたものだろう。思わず違和感を抱いてしまった。

 景観も海辺の大事な構成要素,資源であろう。しかし、ここでも商売や利便性が最優先なのだろうか。自分が浜茶屋の経営者だったらどうするだろうか?きっと建物の中に設置するだろうな。いや この時代だからこそ、あえて説明を付けてドリンク類は氷で冷やすクーラーの中に入れて販売するかも知れない。確か大昔はそうだったのではないかなァ・・・。

 それでなくとも自販機王国と揶揄されるこの国である。まともな感性や当たり前の考え方をしだいに失ってきているのではないか。美意識や良識、あるいは社会的な賢さとでも言うべきものを。おまけに今夏は節電の必要性が叫ばれてもいる。

 電気のみならず資源を、ほんとうに大切に使う生活に切り換えねばと思う。今や意識を大転換する時ではなかろうか。 

清清しい海風を受け、反省と思索の時間が生れて 日々好日、日々感謝。 (E.O) 

(183) 台所のアマリリス

アマリリス写真・画像

 花以外のむさくるしい背景は気にしないでほしい。台所に置いていたアマリリスの花が、数週間にわたって咲き続けた。直径15cmほどの大輪の白花が四つ。中心部が薄緑を帯びた優美な花だった。

 こうしたアマリリスの栽培セットが日本に入って来てから、もう20年くらいは経つだろうか。もうすっかり定着したようである。最近は、米国からの輸入品もあるようだ。

 しかし、もともとはオランダで詰められ、わが国に輸入されたのが最初だろう。現在でも、量の上ではオランダ産が多いと思う。価格も当初よりはだいぶ安くなってきた。この球根も、あのお馴染みの風車の絵が描かれたプラスティック容器にはまっていた。だから、きっとオランダ産だろう。

 今回、意外にも分かったことがある。それは、これら四つの花の咲く順番である。まず一花が咲く。その次に開いたのは、左右ではなく正反対の位置にある花だった。同様に、残りの二花のうちどちらかが咲いたら、今度はまたその向かい側の花が開いてくる。つまり、十字を描くように咲いてくるのだ。

 もう一点、気づいたことがある。それは植物との物理的距離と人の心理的距離である。この花は筆者が毎朝動き回る台所に置かれ、その位置は手が容易に届く所にあった。また、花の高さもちょうど筆者の顔と同じくらい。おまけにあの花の大きさである。だから、毎朝この花が目の前にあって、対話をしていたようなものである。やはり植物との距離が近いほど親密度が増す。

朝食づくりの友であったアマリリスよ、ありがとう。日々好日、日々感謝。 (E.O)  

(182) 矮性シライトソウ

シライトソウ

 写真はシライトソウの一種である。普通種よりはかなり小形なのだ。四国産の矮性種だという。

 これはS園さんを訪ねた際に、偶然発見した。温室の奥の棚上に、小さな花穂が数本立ち上がっていたのだ。何だろう・・・そばに近づいて行き、目を凝らした。か細いけれども魅力的な草本のポット植えが数鉢あった。筆者では判定ができなかった。園主から説明を聞いて、なるほどと頷いた。

 普通のシライトソウなら丈が30,40cmには達するだろう。また、花の付いた花茎の長さも20cm前後はあるだろう。しかし こちらはせいぜい花茎が10cm程度である。それに花も小さく、花が付いている部分もせいぜい5cmくらいしかない。とは言え観察するうちに、魅せられてしまった。薄緑の花茎に、品の良い端整な純白の花を並べている。

 その上、この種は特徴的な花弁の構造を持っている。写真をよく見ると、お分かりになるかも知れないが、花弁は4枚づつ段違い状に左右に伸びている。が、それらの花弁の付け根には白くちょこんとした塊が見える。資料によれば、実はこれが退化した2枚の花弁なのだそうだ。分類上はユリ科植物なので、花弁は6枚あるのが基本だという。もともとは6弁だったのだろうが、そのうち2つが短小化,退化してしまったらしい。

 ところで名前の由来だが、シライトソウはつまり白糸草である。この白い細長い花弁を白糸に見立てて付けられたという。名前から受けるイメージも悪くない。

小さい花でもちょっとした感動は与えてくれて 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(181) 折れ枝に咲いた花

枝折れツバキ

 冬の大雪で折れた枝の先に、サザンカが花を咲かせた。どうも狂い咲きらしいが・・・。写真の右上には、折れた枝の付け根が目に入ると思う。

 健気というか逞しいというか。花は上品な薄いピンクだ。今どき、こんな風に“強さと美しさを併せ持つこと”がとても価値あるように思える。

 出張や早出のとき以外は、このサザンカと毎朝顔を合わせる。洗面所のすぐ外にあり、永年にわたって親しくしている。こちらが時々声を掛けたり、あちらからこのように教えられたり・・・。

 この木については、以前にも書いたことがある。ブログを書き始めて間もなくだった、第(3)号においてである。その際も“胴ぶき”というテーマで、このサザンカの逞しさについて採り上げていた。

 まだ若木だし、ポッキリとは折れにくい木質もあろうが、この木にはとにかく強靭さを覚える。2月の大雪の時には、落下しないで樹冠部に残った40,50cmもの積雪に耐えた。しかしその後、2度3度にわたって滑り落ちてくる屋根雪には持ちこたえられなかったようだ。結局は写真のように、太枝が逆V字形に折れ曲がってしまったのだ。

 しかし そうなっても、折れ枝の維管束が致命的な損傷を受けなかったのだろう。新葉も伸び出し、蕾がふくらみ花が開くところまで来た。

 この木は大雪だけでなく、4月初旬のあの「爆弾低気圧」にも揉まれた。2日間、揺さぶられ曲げられ続けた。しかし 乗り越えた。たいしたサザンカである。

“強くなければ生きていけない、美しくなければ生きていく資格がない。”

木々好木、木々感謝。 (E.O)

(180) オオバナノエンレイソウ

オオバナノエンレイソウ写真

 写真の植物はオオバナノエンレイソウである。初めて目にした。

 先日、地元の花関係の催し物でディスプレイに用いられた鉢植えである。特徴的な三枚の花弁と三枚の輪生葉。おそらくエンレイソウの仲間だろうと推測はした。しかし 普通のエンレイソウの花より巨大で、それも白花である。山野草には正直のところ、たいして詳しくない。ウーン・・・。確証もなかったので、帰ってから資料にあたったり、山野草に詳しい同業者にも尋ねた。

 その結果、オオバナノエンレイソウだという結論に達した。それにしてもエンレイソウとは花の大きさや色が全然違う。エンレイソウの花(実は外花被片)はこれよりはるかに小形で、色も緑色や暗紫褐色である。それに内花被片は普通ない。それに対して、このオオバナノエンレイソウの花は前述したように巨大で白い。そして、その巨大な花の本体が内花被片なのである。ただ薄く繊細な花弁なので、花持ちはよくないだろう。

 分布は本州北部,北海道そして千島,樺太,朝鮮,中国=東北部,カムチャッカ,シベリア東部まで及ぶという。また、北海道では各地で群生が見られるらしい。それに、変種や交雑種が何種類かあるようだ。

 ところで、属名のTrilliumは3のユリという意味らしい。もちろんユリ科である。また種小名の kamtschaticum はカムチャッカから由来したものだろうか?なお、資料を調べていったら、このオオバナノエンレイソウの花は北海道大学の校章として使われていることを知った。

新しい花を知ることで 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(179) スズランスイセン

スズランスイセン写真

 写真はスズランスイセンの畑である。温室やビニールハウスが立ち並ぶなか、ここだけだった。ほぼ毎日通っている農道の傍らに、こうした花園があるとは最近まで気づかなかった。

 球根養成用に植えてあるものだろうが、ちょうど白い清楚な花が開き始めたところだ。開いても直径1cmほどの小形の花だが、それが畑一面に撒かれたように咲いていた。こうなると、目を引く風景になる。

 スズランスイセンの花は、ふつう6枚の花弁の先に緑の斑が入る。また、開いた花の中央部には黄色いしべが覗ける。可愛らしい花だが、名前の由来であるスズランの花と比べると、大きい。スズランの花の直径は、実際に測ってみると1cmには達しない。

 ところで このスズランスイセンは、スノーフレークと呼ばれる方が一般的かも知れない。筆者はこれがスノーフレークと呼ばれた場合、スノードロップと混同することがある。それは花期も草姿も似ており、どちらも球根植物であること。また、この花の形が壷型であり、それ故ドロップを連想するからだろうか。あちらは同じヒガンバナ科であるが、ガランサス(Galanthus)属である。それに対して、スノーフレークは同じヒガンバナ科ではあるが、レウコユム(Leucojum)属である。

 毎年、周りの除草と施肥を欠かさねば、何年も咲き続ける。とは言うものの、毎年この辺りの堤防の斜面では所々で咲き続けている。

「スノーフレーク 駆け抜けてゆく 女学生」  (澤中範子)

放っておいても毎年確実に咲く花があって 日々好日、日々感謝。 (E.O) 

(178) ヘリクリサム

 事務所の玄関まわりも春景色になってきた。写真は外の棚に並べられた宿根ヘリクリサムである。最近、少しづつ人気が高まっているようだ。左からピンク,オレンジ,黄色の花色である。

 柔和な感じを与えるその花は、何週間も楽しめる。球形の蕾の大きさは直径6,7㎜、花が開いてもせいぜい1cm前後の小さな可愛らしい花である。ただし外側は花弁に見えるが、キク科植物なので実は「総苞」である。その花が開ききっても、その後にドライフラワーとしても利用できる。

 現在これら3鉢の花は切花として花瓶に挿され、アイリスなどと共に事務所の来客用カウンターの上に置かれている。また同じ事務所内の書棚には、2年ほど前からそのドライフラワーが飾られている。

 このヘリクリサム、葉や茎には短く軟らかい毛が密に生えている。だから、見た目には草姿全体が白っぽく映る。この点は同じキク科のハハコグサなどにも似ている。

 ヘリクリサム属の植物は多様だ。まず、一年草,宿根草,低木などのタイプがある。分布域も南ヨーロッパから南アフリカ、熱帯アジアやオーストラリアと広い。そして、この仲間は全部で500種もあるらしい。

 ところで栽培の面では、まず夏にはムレないように乾燥気味にすること。また、冬は厳しい寒さに当てないこと。それに、日当たりと水はけのよさは忘れないでほしい。

 実を言うと、これらは“ブルームス”というブランドで当社がオランダの業者と専売契約を結んでいるオリジナル植物である。

たまには商品の宣伝をさせて頂いて 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(177) ムスカリ

 写真はうちの農場で咲いていたムスカリである。一般的なムスカリ・アルメニアカム(アルメニアクム)であろう。この独特の青い花色だけでなく、この“粒々”も何とも言えない。“粒々”は一つ一つが花で、それが密集して総状花序をつくっている。ブドウの房のような、という比喩を二つの資料で見つけた。

 若い頃、この花を最初に見たときには、その美しさと“粒々”に興味を覚えた。こういう花もあるんだなァ・・・世界はやっぱり広い!それと共に強靭さも感じた。だいたい半野生化したようなムスカリが、この辺りの畑の隅っこや道端に生えていたのだ。掘り起こさずに植えっぱなしにしていても、何年も咲き続けるようだ。

 ユリ科植物でヒアシンス属と近縁らしい。何となく頷ける。分布域は地中海沿岸や西南アジアだという。地上部が枯れた後にムスカリを掘り上げてみると、チューリップの三分の一か四分の一くらいの球根が姿を現す。ちょっとアサツキかノビルに似ているだろうか。 

 近年ムスカリの仲間は日本にも多様な品種が入ってきている。白花はときどき目にするし、黄花,紫花,二色花も流通している。羽毛のような品種もある。芳香品種も出回っているらしいが、まだ出会ったことがない。

 色彩や低い草丈という点からも、またその丈夫さからしても他の春咲き植物と組み合わせるには、最適の球根植物の一つだろう。ここで一句・・・ムスカリや 他とも組んで 魅力増し。心惹かれる秋植え球根の一つである。

ムスカリも1週間遅れでも咲いてくれ 日々好日、日々感謝。 (E.O)

(176) チューリップ試験栽培⑤

 2枚の写真とも「ジュリーソベル」という品種のチューリップである。左・右どちらも同一品種なのだ。

 写真左のクリーム色の方が咲きはじめである。その花色がしだいに白く変わってくる。その後 開花の後半に至ると、花弁の先が線状に濃い紫色を、花弁本体が面状に薄く紫色を呈してくる。日が進むと、その紫色が広がり濃くなる。最初は清楚で可愛らしい印象を受けるが、後半になると妖艶さすら感じる。

 この「ジュリーソベル」、トライアンフ系の新しい品種である。その花の初期と後半の両方を最初に見た時には、ええーっ!と思った。すぐには同じ品種だとは理解できなかった。

 これは先回(175)号で書いた花色の変化の極端な一例である。正直言って、説明が無ければ分かりづらい。このように開花中の花色の変化が顕著なタイプを、園芸業界では“移り咲き”と言ったりしている。また、“カメレオン咲き”と称する場合もある。

 新潟県の園芸研究センターでも、近年こうしたタイプのチューリップを作り出している。「桜小雪」という品種である。最初は白色で、後半になってくると花弁の縁がピンクに染まってくるのである。(この「桜小雪」については、当ブログ(41)号でも書紹介している。)

 ところで サツキは典型的だが、一本の木から赤・白・絞りの花々が咲くのを「空間的な咲き分け」とするなら、こうした“移り咲き”というのは「時間的な咲き分け」とも言うべきなのではないか。全くの私見だが。

チューリップは変身の面白さも見せてくれて 日々好日、日々感謝。 (E.O)