(371) モンゴル日記(86)

モンゴル日記(86)

モンゴル日記(86)

【 缶開け 】

 アパート生活に慣れてきた頃のこと。ふたを開けるタブのついていない、古いタイプの缶詰を開けるのにてこずった。缶切り道具は当地で購入し、それで挑んたのだが、これがうまく使えない。穴は何とか開いたのだが、缶のふたを切り進むことができない。何度やってもダメなのだ。

 魚不足になりがちな食事の一品にと考え、ロシア産らしいイワシの缶詰めを開けようとした。しかし、コトは簡単にはいかなかった。しまいに諦めて、その朝食のメニューには加えずじまい。

 その後に、T嬢がいつものように部屋まで迎えに来てくれた。そこで、彼女に何かいい方法がないか尋ねた。そうしたら 「別のもので開けましょう。カタオカさん、ナイフはありますか?果物ナイフでいいですが」。そこでそれを彼女に差し出し出す。そうしたら何と・・・、彼女は事もなげに缶を開けはじめた。

 写真上で缶のふたを切り進めているのは、その果物ナイフである。もちろんマニキュアの爪は彼女の手だ。そして彼女は難なく、コトを成しとげた。写真下は、彼女が見事に開けてくれたその缶である。ナイフの刃もこぼれていなかった。

 さすが、と理由はうまく説明できないが感心した。そして、チラッと恐怖も覚えた。刃物を上手に使うんだもの。それをすぐに打消し、彼女に感謝,感謝。

T嬢は日本語も英語も話し、こんなたくましさ(?!)も持ちあわせる才女である。日々好日、日々感謝。 (K.M)