(601) モンゴル日記(316)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて64 】

北モンゴル最奥部を訪ねて64

北モンゴル最奥部を訪ねて64

 写真を見て、何がテーマか分かる人もいよう。羊の屠殺である。そのプロセスも数枚は撮影したが、ここには載せない。

 モンゴルでは肉料理というと、ふつう羊肉が出される。そんな食習慣を背景に、生きた羊が羊肉に変わるまでの過程をここで目にした。写真でいえば、上の場面から下の場面に変わるまでのほぼ一部始終をである。

 1日目の昼頃,親友B氏が囁いた。「シャチョー,私たちが食べるのに羊を肉にします。その現場を一度は見ておいたらどうですか?」。好奇心がざわついた。けれど迷った。が、目撃することにした。

 結論から言うと、1時間ちょっとのそのドラマを目にしたショックは小さくはなかった。しばらく肉は食べたくない・・・。そして、名著『アーロン収容所』を思い出し、帰国後に久しぶりに読み返した。

 「・・・日本人は一般に家畜の屠殺ということに無経験な珍しい民族なのである。同じアジア人でも、中国人やビルマ人は屠殺に馴れている。それ以上にヨーロッパ人は馴れている。・・・(日本人は)牛肉は大好きなくせに、殺すことと殺す人を嫌悪する風習がある。ヨーロッパでは、毛皮業者や食肉業者の社会的地位が昔から高かったのである。」と,著者の故会田雄次氏は述べる。

 目に焼き付いたのは羊の表情だった。それは間もなく命を失うことを悟っていた目だった。(上の写真)。日々異体験、日々異文化。 (K.M)