(460) モンゴル日記(175)

【 婦人デー⑤ 】

 この風景がこちらで合弁事業をやろうと決意した、いわば原点なのだ。ガーデンセンターの花売り場の3月8日夕方の一コマである。

 婦人デーには、ハバロフスクなどでもこうした場面に出くわした。旧社会主義国ではたいてい国の祝日となっていて、親しい女性に花を贈る習慣が根づいている。だんなが奥さんに、ボーフレンドがガールフレンドに、そして男の子が母親に・・・。街じゅう花束を抱えた男たちが行き交う。

 また近年こちらでは、職場で男性たちが女性たちに花を贈るやり方が定着しているようだ。だから今年のうちの売り場でもチューリップをまとめて買い込み、領収書をくれという若い男性が何人かいた。

 ところで、この行列をはじめて目にしたとき思った。「大の男たちが花束を買いに並ぶなんて・・・?!」。けれど、何度も見るうちに、「いいよなァ、恥ずかしげもなく花束を買えるんだから・・・」。業界関係者としても一人の男としても、うらやましくなってきた。

 これまで特定の女性に花を贈ることはあまりなかった。若い頃に配偶者とけんかして、その停戦交渉の小道具として用いた記憶はある。あとは飲み屋の女性に持って行くくらいだった。それがどうだろう、こちらでは男たちが堂々と花売り場の行列に加わる。そして、物静かに自分の順番を待ち続けるのだ。

あァー、国柄の違いを知らされる毎年の婦人デーである。日々好日、日々感謝。 (K.M)