(454) モンゴル日記(169)

【 咲いてきた球根類 】

 

 写真のチューリップやムスカリは、2月に二晩にわたって-7℃という災難にあった。けれど、このように問題なく咲いてくれた。その姿を見てホッとし、よくぞ咲いてくれたと思った。

 写真左は前にも紹介したが、チューリップ「キャンディ・プリンス」。コンテナに植えてあるので、これらは切花用である。まァ少し草丈が足りないが、花はまともに咲いてくれた。しかし、このうすい紫ピンクの花色は、日本ならそれなりにウケるだろうが、こちらでは・・・不安を抱かせる花色ではある。その結果は、3月8日の婦人デーで明らかになるだろう。

 一方 写真右は、こちらにはじめて持ち込んだムスカリである。これもこちらの人々がどんな反応を示すか、それを見たくて輸入したところもある。期待を抱く反面、不安も消せない。この国では、この個性的な球根植物をはじめて目にする人々が大半だろう。そんな彼らは、この植物にどんな感じを持ってくれるだろうか。

 ムスカリの草丈が低いこと、花が小さいこと、これらがモンゴルでは難点かも知れない。しかし、花は小さいがブドウの房のような姿が独特であり、鮮やかな青花であること。また それが比較的長持ちすること。これらはセールスポイントになろう。でも どうなることか・・・。これも婦人デーで分かることだ。

3月8日を期待と不安の心で迎える、園芸屋のおやじである。日々好日、日々感謝。 (K.M)

(453) モンゴル日記(168)

【 オフィスの鉢植え 】

 

 写真はいずれも、ある会社のオフィスに置かれた鉢植えである。数えたら30近くあった。多い方だろう。鉢の数はともかく、このような窓辺は事業所であれ家庭であれ、ウランバートルでは珍しくない。

 前にも書いたと思うが、こちらでは鉢植えの花が終わった後も、それを置いておくのがふつうだ。だから、至るところでこうした風景を目にする。そして、誰かが水やりをしていることに気づく。誰かが世話をしているのだ。親友B氏ご夫妻の場合、「鉢の植物を枯らさない」と自慢するのはBさん、実際にこまめに水を与えているのはどうやら奥さんらしい。

 ところで、こうした室内風景を見せつけられると、日本で花き園芸に携わっている者としては、ちょっと複雑な気持ちになる。花の消費が縮小傾向にある日本と比較してしまうのだ。なんだかんだ言っても、日本はまだまだ豊かだ。また、これまで確かな花文化が根づいていたと思う。それなのになぜ、最近は花を飾ること,花を贈る・贈られることが少なくなっているのだろうか。いろいろ要因はあろうが、心が貧しくなっているのだろうか。

 とにかく花と緑を身近に置いておくこと、室内で緑と共存すること。こうした感覚は、モンゴルの人々の多くが持っているようだ。事実上 半年は冬という彼らにはそれが自然であり、本能的にそうしたくなるのかも知れない。

日々花緑、日々好日、日々感謝。 (K.M)

(452) モンゴル日記(167)

【 温室内の氷結 】

 

 2枚の写真は、温室内で外気と接する場所にできた氷結だ。写真左は、出入り口のある西北角の鉄柱にできたものである。足もとの方が氷柱のように凍りついている。ちょっとやそっとでは壊れない。鍾乳洞のなかにできる石筍にも似ている。ただ、何の水が原因でこうしたモノが形成されたのか?それはよく分からない。しかしながら、作業には支障がないから放っておいた。けれど、1日,2日は融けなかった。

 また右の写真は、温室の入口に取りつけられた引き戸の、下の方である。吊り下げ式なのだが、開け閉めを頻繁にしないと、すぐ下の方が凍ってしまい、開かなくなる。そうなると、ハンマーか何かで氷を砕かなければならない。写真では氷のかけらが見えるが、砕いた直後の様子である。まァ、こんなことは新潟の温室では体験しない。

 このころ、植物の置いてある温室の中央部は、日中ならプラス10℃はらくに超える。しかし、隅々とくに出入り口のあたりは、気温が下がったままである。冷たい外気が常に入ってくるからだ。それで写真のように凍ってしまう。

 この気温の落差が人間にとって、それ以上に、動けない植物にとって大変だろう。しかし、彼らは健気にもそれに耐えながら営みを続ける。実際、この入口に近い方の植物は開花がいつも遅くなるが、ちゃんと咲いてくれる。

ある面、植物は人間より律義で強いと実感する。日々好日、日々感謝。 (K.M)

(451) モンゴル日記(166)

【 ボケの植込み 】

 

 写真左は、輸入したボケの鉢植え作業である。前号で述べたように根包みをはずし、それをプラ鉢に植え込む。これがなかなか大変なのだ。

 ボケのようなボンサイ的植物を鉢に植える際、はじめにやることが幾つかある。まず木の正面を割り出す、植える角度と高さを決める、などなど。こうしたことは筆者がやるしかない。だから、この作業はこれまで一人で行ってきた。しかし、今回は400本もある。また植え役は一人だが、アシスタントが二人もいる。だから、彼らの待ち時間が常にできてしまう。

 そこで今回 考え出した。ボケの向きや角度決め、そして粗(あら)植え込みまでは、筆者が行なう。その後の仕上げは、社員2人がやることにした。分業化である。このやり方で彼女たちの待ち時間がだいぶ減り、作業の流れが良くなった。

 左の写真で褐色の厚紙が乗ったコンクリート・ブロックは、筆者の作業イスだ。これに腰を下ろして2日間、植込みに専念した。この日は約6時間もこのイスに座りっぱなし。それで終盤、腰が痛みだした。腰痛持ちではないが、同じ姿勢で長時間 作業を続けたからだろう。

 ところで、写真右はこの日の温室の外のようすである。すでに午後3時は過ぎているのに、路面に張った氷はいっこうに融けなかった。そういえば、この日の朝は-21℃まで下がっていた。

モンゴルでも「改善」の実践である。日々好日、日々感謝。 (K.M)

(450) モンゴル日記(165)

【 運び入れた植物② 】

 

 写真左は箱から出したボケである。写真右はその拡大写真だ。花蕾が少し膨らんできていたので、前号で書いたように、荷造りでは根もとから上を新聞紙でくるんだ。そのため、蕾はほとんど落ちなかった。

 これらのボケは品種的には4種類が混じっていた。新潟はその特産地だが、こちらに輸入することを始めて3年目。2年目の販売の時から、〝ボンサイ ボケ〟と言いながら売りはじめた。そのせいか、買い求めて行く人が徐々に増えている。モンゴルの人々にとっては、ほとんど馴染みのない植物だったろうが。

 だから、ボケは今や春の花木としては有力商品である。けれども、これまで開花はどうしても3月8日の婦人デーには間に合わなかった。今年も実はそうだった。しかし、社員のT嬢はちょっとしたアイデアを考え出した。

 それは、陳列した未開花のボケの前に、ボケの花のカラー写真を飾った。その美しい写真が載った本を、ページを開いて置いたのだ。それは以前、筆者が彼女に与えた本だった。これはいわば、売り場での新しい販売促進の手法となった。その結果、それらの写真に目をやり彼女に質問をして買っていくお客さんが、確実に出てきた。中には商品を買わずに、その写真をスマートホンで撮影していくだけのお客さんもいる。効果は間違いなくあったようだ。

販売促進で、あの手この手を試してみよう。 日々好日、日々感謝。 (K.M)

(449) モンゴル日記(164)

【 運び入れた植物① 】

 

 前号で紹介した植物を、フジガーデンの温室に運び入れた。まず段ボール箱を開け、中の植物をていねいに取りだす。次に、それらを種類ごとに分ける。写真はその時のようすだ。写真左は全景で、右奥にはまだ開けていない箱が2つ残っている。写真右は手前の植物の拡大だ。

 輸入した植物はみな、写真のように根包みをしてある。まず根洗いをして用土を完全に落とし、オランダ産ピートモスでその根をくるむ。次に、それをビニール袋に入れて口をテープやビニタイで締める。そのうえ花蕾がふくらんでいるものは、根から上を新聞紙でくるみ荷造りする。花蕾が落ちたり、傷まないようにするためだ。

 ところで、写真の奥や左側に見える植物はチューリップである。これらを含めても、この温室はまだ50%はふさがっていない。つまり面積だけでいうと、まだまだ栽培余地があるのにそれを使っていない。この点は課題のひとつだ。

 さて手前の芽が出ていない植物(写真右の植物)は、ミソハギ科の花木だ。はっきり言うと、矮性サルスベリである。今回はじめて輸入してみた。また、右列の置き台の上にも1種類、常緑の植物が置かれている。こちらも初お目見えだ。どちらも試験栽培、そして試験販売を計画している。これらの鉢植えにモンゴルの人たちはどんな反応を見せることか・・・。

ハードルがいくつもある植物輸出なのだ。でも 日々好日、日々感謝。 (K.M)