(383) モンゴル日記(98)

 

【中央県へ ⑤】

 新空港の建設現場に寄ったのち、1ケ所だけ旧跡を訪ねた。それは比較的知られた場所で、日本のガイドブックなどにも紹介されている。「マンジュシュリヒード」と呼ばれるラマ教の寺院跡である。

 それは国立公園の区域内にあり、数年前に一度連れて来てもらった場所だった。草原ではなく、岩や石の多いごつごつした山腹には、かつて壮麗な寺院群,修道院の建築があったという。そして現在は、ごく一部が残っている。その風景が写真左である。

 ここは18世紀から寺院建築がはじまり、19世紀前半には350人もの僧がいたという。けれど、この国が社会主義になってから、大半がソ連によって破壊されたらしい。それはスターリンの時代だったようだ。現在わずかに残った施設が点在し、一部は再建され博物館などになっている。

 これらの伽藍跡に立って散策すると、やはり何やら侘しいような虚しいような気分になってくる。「宗教はアヘンだ」と決めつけた社会主義の、人間理解の底の浅さをいまさら思ってしまう。

 ところで この辺り一帯には、珍しく針葉樹が多い。比較的 雨量が多い地域なのか、何らかの水源(積雪もそうだろうが)でもあるのか、面積の広い樹林を形成している。だから、寺院跡の高台から南側を望むと、写真右のように針葉樹の混じった美しい山岳風景が展開する。

中央県ではさまざまな出会いがあって 日々好日、日々感謝。 (K.M)