これは最近 撮影した写真の中でも気に入った1枚である。もし俳句を嗜んでいれば、一句 詠めるかと思えるような素晴らしい夜明け前だった。
実を言うと、これは5月半ばの風景である。田植えから2週間ほど経ち、稲もしっかり根づいたが、まだ か細い。田には水がたっぷり張られ、水面が広かった。そこに映った月とビニールハウスである。その立ち並ぶハウスには主にアザレアが入っている。秋出荷向けで冷蔵前のものである。田んぼと鉢花栽培のビニールハウスが共存する風景は、この地域の農業の縮図である。
時刻は朝の4時過ぎ。月齢は約16日で、ほぼ満月を保っていた。皓皓とした月明かりが、あたり一面を照らしている。何やら狼男みたいだが、その怪しげな月光に誘い出されたように、起きてすぐ動き出した。この時こそシャッターチャンス!と思い、自転車にまたがり撮影の障害物がない田んぼの方に向かった。
月明かりの世界がまもなく陽光の世界に入れ変わろうとするこの時間帯。大気は清浄な色と香りを漂わす。まだ鳥たちも騒ぎ出さず、静寂に包まれている。それに全く無風であった。この独特な時間と空間が自分のために現出したようにも感じる。心地よい、それでいて不思議な感覚・・・。
・・・それから約1ヶ半月後、写真の稲もこのところ大株に生長し、その茎もだいぶ太くなってきた。草丈も40~50cmに達している。もう稲と稲のすき間が見えなくなってきた。
日々好日、日々感謝、稲にも感謝。 (E.O)