(610) モンゴル日記(325)

【 北モンゴル最奥部を訪ねて73 】

北モンゴル最奥部を訪ねて73

北モンゴル最奥部を訪ねて73

 上の写真は今回のツアーで最も気に入った一枚である。シシケッド川の岸辺で、たまたま放牧の牛と川面を泳ぐ水鳥がタイミングよく共存する場面をとらえた。幸運にも,彼らの生き生きしたようすをひとつのフレームで撮影できた。

 はじめのうちは川を下流へと泳ぐ,例のアカツクシガモ一家を追っかけていた(写真下)。カモたちにとって、自分たちに興味を抱く日本人の旅行者のことなぞ知ったことではない。だから,水面で止まってポーズを作るなんていう芸当はしてくれない。そのまま下流に泳いでいった。

 一方,7頭の牛たちはみな若い牛で、あたり前だがカモのことなど全く眼中にないようす。仲良く川辺の短い草をのんびりと食べ続けていた。

 と,しだいにカモたちが岸辺にいた牛たちに近づくような構図になった。「おおっ,おもしろい情景になるぞ。こりゃあチャンスだ!」、とばかりにシャッターを押す。そして,上の写真とあいなった。カモたちが泳いで水面に描いた、飛行機雲のような波紋の線も鮮やかに写っていた。

 実はこの”名場面”は撮影したあと、すっかり忘れていた。けれど帰国してから、何百枚という写真を順繰りにチェックしていたら発見した。そこで,「これは絶対ブログに載せよう」と、その時から決めていた。

 写真家というのは、風景のなかに詩を見いだす達人かもしれない。日々情感、日々詩心。 (K.M)