(121) 百両金(カラタチバナ)-其の一

百両金(カラタチバナ)-其の一01

百両金(カラタチバナ)-其の一02 

 写真は伝統園芸植物の代表格である「百両金」である。写真上がその野生種(普通種.赤実)であり、下が白実の品種である。

 「百両金」と書いて、カラタチバナと読ませる。皆さんご承知のように、和物の世界ではかつての貨幣単位“両”の字の付くものが幾つかある。マンリョウは「万両」、センリョウは「千両」、そして「十両金」と書くとヤブコウジを意味する。植物で十両から万両まで揃い、それらは全て常緑の小低木である。その他に、アリドオシ(アカネ科の常緑低木)を「一両」と呼ぶという説もある。

 ところで学名で言うと、カラタチバナ,マンリョウ,ヤブコウジはそれぞれArdisia crispa,Ardisia crenata,Ardisia japonicaである。それに対してセンリョウはChloranthus glaberである。属が違うのである。だが、いずれも常緑で赤い実が付くので縁起の良いものとされ、日本では正月用などに古くから飾られてきた。

 さて この百両金だが、写真のような野生種(普通種)から、想像もできないほど千変万化の品種が生み出された。そうした品種改良は、騒乱がなく繁栄の続いた江戸時代に大いに行われたのである。とくに文化・文政の頃だという。百両金に限らず石菖でも松葉蘭でも、江戸時代には伝統園芸植物の多くが隆盛をみた。

 最近 地元でこうした伝統園芸植物の展示会が催された。そこで これから数回にわたって、陳列された百両金のごく一部の品種や、その他の珍品を少しご紹介したいと思う。

身近な所に百両金の一鉢でもあれば 日々好日、日々感謝。 (E.O)