(207) 初夏のモンゴル⑪

日本人慰霊地

【日本人慰霊園】

 ウランバートル郊外にある日本人慰霊園をやっと訪ねた。義務が果たせる!そんな思いだった。

 この辺りにはかつて、旧日本軍兵士などモンゴルで死亡した日本人たちの墓地があった。その多くは敗戦後に 強制労働を強いられ、命を失っていった抑留者である。

 ここを彼らの慰霊の地にしようと、戦後モンゴルと日本の関係者が交流を始め、その後は両国政府も動き出した。 その結果、遺骨の収集・返還などと共に、ここの整備も始まった。

 入口には受付も説明板もなかったが、門扉が開いたのでB氏と共に中に入った。ほどなく、中年の男性が現れた。彼が管理人で、ここの説明役も兼ねていた。彼はまず、記念堂に案内してくれた。

 堂内に入り、日本から持参した菓子を祭壇にお供えし、合掌した。展示台には氏名の分かった埋葬者の名札が何百枚も並べられていた。また、一通の遺書と言うべき手紙が展示されていた。それは、苦悶のうちに異境で生を終 えることを覚悟し、祖国にいる家族に感謝の念をしたためた文面であった。読んでいるうちに、込み上げてくるものがあった。

 そのあと慰霊碑(写真)前でも説明を受け、小冊子をもらってそこを辞した。ホテルに戻り、それを読んだ。そ の中には当時の関係者の証言が記されていた・・・収容所ではモンゴル人職員と日本人捕虜との間に信頼関係が生 まれた、心の交流が芽生えた、といった記述がいくつもあった。そうであったとしたならば、少し救われる思いがした。

異境で命を終えた方々に、改めて慰霊の思いと感謝の念を捧げたい。 (E.O)