(208) 初夏のモンゴル⑫

初夏のモンゴル

初夏のモンゴル

【ゲルの移動】

 ゲルはモンゴル遊牧民伝統の移動可能なテント式住居である。けれど、その移設の場面に出くわすこ となど無かった。D社長やB氏などウランバートルの人々でさえも、めったに会わないらしい。その隊列に、たまたま遭遇した。

 滞在四日目、エヘガザル社と業務上の大きな交渉を終えた。D社長は「ビジネスが終 わったから、田舎へ行こう」と、いつものように筆者をアウトドア・ライフに誘った。そこで今回は魚釣りの目的で 、トール川の上流を目指すことになった。その移動中のことだ。D社長がこの隊列をいち早く見つけ、彼らに道を譲るよう運転手のMさんに指示した。彼はレクサスを道端の草むらに止めた。

 D社長は興味があったのだろう。車を降りて先頭の男性に声をかけ、話をはじめた。B氏の通訳では、彼ら二人は親子でゲル移動の最中なのだ そうだ。分解したゲルの組み立て資材一式を積み込み、運搬しているところだという。飼っている多くの家畜たちは、先に他の家族が移動させているらしい。

 彼らは八台の荷車を八頭の牛に引かせていた。正確にいうと、七頭の牛と一頭のヤクである。牛より一回り大き い。このようにヤクも役牛同様に使っているのだ。

 D社長が「めったにない機会だから、先頭の父親と一緒に写真に納まったらどうか」と勧めた。それで撮影して もらったのが下の写真である。人の良さそうな親父さんで、笑顔を絶やさず被写体になってくれた。逆光ではあったが、貴重な記念の一枚になった。

今回も印象深い遭遇があっって 日々好日、日々感謝。 (E.O)