(228) 緑のトリカブト

緑花トリカブト

 開花前なので分かりにくいが、トリカブトである。話を聞いていたので、筆者でも花の姿からそう判断できた。ただし、これは普通種のように青花(紫花)ではない。写真のように緑色なのである!もちろん初めて目にした。

 この植物が花に劣らぬほど広く知られているのは、その植物体とくに根に有毒成分を含んでいるからだろう。そのうえ1980年以降でも二回ほど、この国でその毒が実際の事件で用いられた事実が明らかになったからだろう。

 普通のトリカブトの花は鮮やかな青(紫)である。それと、特徴的なのはその花の姿である。外側の花弁に見えるのは実は萼であり、それが五枚ある。その頭の部分の萼(頂萼片)が、古人がかぶった帽子=鳥兜に似るところから付けられた和名だと、一般的には言われている。

 ところで、トリカブトの花色は園芸品種も含めると、青(紫)系を基本に白,黄色まである。ただ幾つかの文献によれば、この属の植物は変異が多く、分類がなかなか難しいという。それで合点がいく。つまり、この緑のトリカブトもおそらく変異の一つなのだろう。だいぶ珍しいが。

 ところで、この属の植物は日本には約30種が自生する。その中には、少ないが無毒の植物もある。しかし、トリカブトはドクゼリ,ドクウツギと並び、日本に自生する三大毒草と称されるらしい。なお、英語ではこのトリカブトを“wolfsbane”と呼ぶという。文字通り、オオカミの毒といった意味である。

きれいな花にはトゲもあれば、毒もある。しかし、その点を承知しながら観賞すれば 日々好日、日々感謝。 (E.O)