(136) 百両金(カラタチバナ)-其の五

百両金(カラタチバナ)-其の五

 やはり正月は、おめでたい それでいて落ち着いた植物がふさわしい。それで百両金を再び掲載する。撮影場所はあまり良い所ではなかったが。

 写真の百両金は「太平殿」である。葉の色や姿が派手で、遠くからでも目立つ品種である。葉の幅が広く、このように全体に大きくうねるような動きの葉の変化(葉芸)である。こうした葉芸を「鳳凰葉(ほうおうば)」と呼ぶのだそうだ。この鳳凰葉に派手に広く斑が入る。何と言っても、これが「太平殿」の魅力であろう。葉が荒々しい姿をしているが、なかなか美しい。人気品種らしい。

 関係資料では実は茶色となっているが、赤茶色とでも表現すべきだろうか。また 幹の色も赤味を帯びている。

 ところで 以前にも若干触れてきたが、この百両金をはじめヤブコウジやマンリョウなどヤブコウジ属(Ardisia)の植物は、江戸時代に大いに受け入れられ、園芸的に発展した。当時の文献によれば、その頃すでに百両金は60以上の品種数が記載されていたという。

 この江戸期には、いわゆる伝統園芸植物としてこれらの他に、木本ならツバキ,ボタン,キンシナンテンなどが、また草本ならキク,フクジュソウ,アサガオ,ナデシコといった多彩な植物が人気を集め普及していった。変わったところでは、マツバランのようなシダ植物も盛んだった。

 話を戻し、百両金はとくに文化・文政期(1804~1830年)には、斑入り品種や葉変わり品種が大変な人気を集めたという。(※このテーマ次号に続く)

 常緑で実も付く植物こそ正月にふさわしけれ。日々好日、日々感謝。 (E.O)