(137) 百両金(カラタチバナ)-其の六

 

百両金(カラタチバナ)-其の六

 これは百両金の「出雲小判錦」という品種である。

 名称に付く‘小判’は葉の形を示し、写真のように小判形の丸っこい葉のタイプをいう。また この品種の特徴の一つだが、葉に厚みがあって表面に強い凹凸が現れる性質を“岩石性(がんせきしょう)”という。

 さて、この品種の斑には葉の縁に線状に出現するものもあれば、葉に面状に出現するものもある。面状に斑が出るものの中には、葉の主脈から半分が薄黄色の斑、もう半分が地の緑色という対照的で鮮やかな柄が出る場合もある。このような場合、「源平斑」と呼ぶようだ。そうした斑の個体も見た事はあるが。

 ところで 写真では見えないが、この「出雲小判錦」には実が一つ付いていた。上品で優美な、大きめの白実だった。

 さて前回は、百両金の江戸時代における園芸的な発展や人気ぶりを伝えた。その後 明治期に移っても、その愛好熱は冷めなかったようだ。簡単に言ってしまうと、それは連綿と戦前まで続き保たれた。機会があれば、後にもう少し述べたい。

 しかし、戦後は時代状況が一変し、花卉園芸全体が沈み込んだ。勿論 百両金も衰微した。けれど昭和30年代に入ると、高度経済成長につれて、花卉園芸業界も活況を呈してくる。やがて百両金も見直しの機運が出てくる。40年代に至ると、少しづつ人気を盛り返してきたのである。しかし、栽培者や愛好家は新潟県と島根県以外あまり増えなかった。そうして現在に至っているが、近年の和物への再評価と共に見直しも兆している。

百両金、愛でるほどに 日々好日、日々感謝。 (E.O)