(229) 金色に輝く月

雲かかる月

 先月下旬にあらわれた上弦の月。それは幽玄な雰囲気を持っていた。夜の9時半頃だったろう。その独特の色調と趣が、写真にも少しは反映されていたらよいが・・・。

 輪郭はくっきりとしていなかったが、その夜の月は金色の光を放っていた。背景にある夜空も、黒に近い紺色を帯び、果てしない広がりと深みを見せていた。月だけではなく、秋の夜の天体はほかの季節とは異なる情趣をもたらす。・・・ときどき こま切れの雲が流れていく。辺りからはコオロギの鳴き声だけしか聞こえてこない。

 生来、霊感といったものにはまったく縁のない筆者である。しかし この月を凝視しはじめたら、しだいに宇宙的ともいうような感覚が満ちてきた。宇宙との一体感、宇宙の中での自分の微小な存在、時間と空間のとてつもない悠久さ・・・こうしたことに思い至る。鳴きつづけるコオロギさえも宇宙の造形物である・・・。しばし神秘的というか哲学的というか、不思議な時間の中に身を置いた。

 そして 悟った、ただし酒が入っていたが。つまり、自分たちの精神世界という小宇宙の中にも、月のような存在がある。その時、自分の本心は地球つまり“地(ぢ)”で、月はその地球のそばでそれを見つめる客観的な眼にあたる。それで“付き”である。精神状況というのはこの地球である本心と、月である客観的な眼との関係やバランスの反映ではなかろうか。・・・どうやら妙な気分になってきた。やはり月は長く眺めるものではない。

上弦の月を観賞するには、上限を超える酒量はいけなかった。 時々飲酒、時々感謝 ではいけない・・・。