(99) 青空はカンバス!

空の交差線

 緑色をなしていた田んぼ、その上に広がる青空、そこに刷毛で引いたような白い直線の雲が交差していた。

 先月下旬の昼近く、北西の空に偶然 出来上がった構図である。白い帯のような直線は、おそらく飛行機雲と思われる。少しづつ薄くなり、やがて消えて行くのだろう。しかし、こんな何本もの線が交差した風景は、あまり見たことが無かった。

 この日当地では、最高気温が30℃に達しなかった。また、田を渡ってくる そよ風は心地よく、爽やかな昼間だった。そんな日の青空に描かれた、幼い子のいたずら書きのようだったが、興味を抱いた。

 そして 月が変わり、早や9月も半ば。今や青々としていた田圃は黄金色に染まった。早い農家では先週から既に稲刈りを始めている。品種はおそらく早生系の、モチ米かコシイブキだろう。この辺りに多いコシヒカリは、今週末が稲刈りのピークになろうか。

 朝のウォーキングで、そうした刈り終わったばかりの田を通り過ぎる時、微かに稲の匂いが漂ってくる。筆者はこの匂いが嫌いではない。農家ではなかったが、子供の頃から嗅いでいる懐かしい香りである。

 また夜になれば、その籾米の詰まった乾燥機の音があちこちの農舎から聞こえてくる。当地に来たばかりの頃は「うるさい!」としか感じなかったが、これも慣れてくれば雑音ではない。この時季の子守唄のようなものである。とくに米から作り出した魔法の液体を飲んでいれば、なおさらである。

見たことのない風景でも、魅力があれば 日々好日、日々感謝。 (E.O)