(78) モンゴル再訪9-草原の馬

モンゴル再訪9-草原の馬

 この馬の群れに出会ったのも、テレルジに行く途中だった。いかにもモンゴルらしい風景の一つである。

 運転をしていたエヘガザル社の人が、馬群がまだ遠くにいる時から その存在に気付いていたようだ。それで、同乗していた好奇心の旺盛そうな日本人のために、気を利かしてくれたのだろう。早めにクルマを止めてくれたのだ。

 十数頭が爪音と共に遠くから駆けて来て、停車していた筆者たちのクルマを気にする様子もなく目の前を通り過ぎ、たちまち駆け抜けて行った。筆者は馬群が大草原の向うに消えるまで見つめていた。こんな光景は日本ではまず望めない。時間にすれば数分だったろうか。感激した!

 同じ放牧家畜でも牛や羊には申し訳ないが、馬の身体には美しさを感じる。それに動きというか躍動感が伴うせいか、清清しさも覚える。そして、それが集団である。モンゴル馬はサラブレッドなどに比べると、足が短いらしい。けれど、どうしてどうしてそんな事は感じさせず、しなやかで優美だった。

 亡父が戦時中は軍馬に乗っていたせいだろう、馬のことには詳しかったし、好きだった。馬券は絶対買わなかったが、一人で日曜の競馬中継はよく見ていた。そして、新聞のチラシの裏などに本人なりの予想をいつも書き記していた。なるほど、競馬を“楽しむ”のはこういう方法もあるのだな、と感心していた。

 その父は、「馬は頭の良い動物だ。人の気持ちを読む。人によっては好き嫌いをすることもある。」と語っていた。そのためか、馬には一目を置いていた。しかし翌日、生れて初めてその馬に乗ろうとは全く想像もしていなかった。

馬の群れに出会って 日々好日、日々感謝。 (E.O)