(90) モンゴル再訪21-夜のゲル・キャンプ

モンゴル再訪21-宵のゲル・キャンプ

 テレルジのゲルキャンプの夜である。そこには独特の空間が広がり、一種ふしぎな時間が流れた。

 筆者とB氏が泊ったのは左側のゲルである。宵の口のようだが、時刻は既に現地時間22時過ぎ。おそらく外気温はもう20℃を切っていたことだろう。

 風はほとんど吹いていない。ただ、この時間では星はまだ少なかった。と言うよりも、この日はだいたい月夜だった。だから、月の周辺の星は見えないだろうから、満天の星空という訳にはいかなかった。

 宿泊するゲルの近くに、屋外用のテーブルとイスが置かれていた。そこに腰を下ろし、モンゴルウォッカをチビリチビリやりながら、様々なことに想いをめぐらす。

 どうも新潟あたりと比べると、夜の質が違うようだ・・・夜に深みがある。黒を帯びた紺色の闇が満ちる。それが日常と違い、様々な思いや考えを生み出してくれる。商売のこと、来し方・行く末、家族のこと(とくに3月に生れた孫という新しい係累のこと)、新潟のこと、故国とこの国のこと・・・。

 ふつう日没から夜明けまでのつなぎの時間帯を夜と思っている。しかし、ここではその日が終わり、新たな次の日を生み出すための濃厚な時が夜なのではないか、と感じさせられる。

 犬の遠吠えがひとしきり聞こえていた。が、やがて静まった。代わって遠くのキャンプからだろう、若者の歌声らしき音がかすかに響いてくる。しかし、苦にならない。B氏と約束したように、0時までゲルで仮眠をしよう。そして、起き出してテレルジの月を拝もう。・・・それでは、とりあえずお休みなさい。

ゲルで泊って 日々好日、日々感謝。 (E.O)